第八十九話 前世でのわたし・断っても迫ってくる男性
わたしは病弱だったこともあり、舞踏会への参加がなかなかできなかったが、少し小康状態になったので、参加をすることになった。
なんといっても殿下とダンスを踊ることができるという期待で、心が沸き立ち始めていた。
その舞踏会に初めて参加をした時だった。
ルッセソワ殿下が参加していて、わたしのことを好きになったという。
舞踏会の席でいきなり交際をお願いされたが、
「わたしには、オディナデックス殿下という心に決めた方がおられますので」
と言ってお断りした。
その時は、あっさりあきらめていた。
その後、殿下とダンスを踊ることができて、楽しい思いをすることができたのだけど……。
その後からは大変だった。
ルッセソワ殿下は、わたしの屋敷に乗り込んでくるようになる。
「わたしはお前と婚約したいのだ!」
と言って断っても断ってもあきらめない。
次第に困るようになっていった。
ルッセソワ殿下はハンサムだ。
女性に人気がある。
しかし、十人以上の女性と付き合い、しかも全員と既に別れているという。
その中には婚約を約束した人もいたそうだ。
もしルッセソワ殿下の婚約者になったとしても、相手にされるのは最初の内だけで、やがて捨てられてしまうだろうということは、十分予想できる。
いずれにしても、わたしには殿下がいるので、心を動かすことはない。
わたしが断り続けていると、ルッセソワ殿下はだんだん強硬になってきた。
「断りるのもいい加減にしろ! いずれわたしは、力づくでもお前を奪いにくる!」
そう叫ぶようになっていった。
その時に助けてくれたのが、殿下だった。
わたしが殿下に相談をすると、
「わたしに任せてください」
と言って微笑んだ。
わたしは改めて殿下がたのもしいと思った。
冬の日。
わたしの屋敷に今日も乗り込んできていたルッセソワ殿下。
わたしは会うこと自体を断るようになっていたが、なかなか帰ろうとしない。
「リーゼアーヌに会わせろ!」
と叫んでいた。
しかし、わたしは殿下が来るまでは、とにかく我慢していた。
殿下は。今度ルッセソワ殿下が屋敷に来たならば、決着をつけると言ってくれていたのだ。
殿下は忙しい方。
その中を来てくださると言っている。
わたしは待ち続けていた。
ルッセソワ殿下は、なおも居座っている。
こういう時、もっとも頼りになるのはお父様だった。
しかし、お父様は重い病気で病床にあり、わたしのことで気を煩わせるわけにはいかない。
お父様の側近と協議はしたが、なにぶん王太子ということで、対応は難しい。
殿下の到着を待とうということになった。
継母はいらだち始めてきて、
「ルッセソワ殿下と会って話をしなさい。なだめてきなさい。それがあなたのとるべき行動です」
と言ってくる。
継母には、幼い頃から冷たい態度を取られていた。
この家にはわたししか子供がいないので、仕方なしに後継者として認めざるをえなくなってきているが、それでも冷たい態度に変化はなかった。
今度も、わたしがルッセソワ殿下と会って、どういう仕打ちを受けるかもわからないのに、平気で会えと言う。
わたしのお母様が生きておられたら、そういうことは絶対言わないと思う。
しかし、このままだと公爵家全体に迷惑がかかる。
会って、ルッセソワ殿下を説得するしかないだろう。
会うしかない。
わたしが一生懸命に説得すれば、きっとあきらめてもらえるはず。
そう思っていたところに……。
待望の殿下がやってきた。
「面白い」
「続きが気になる。続きを読みたい」
と思っていただきましたら、
下にあります☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に思っていただいた気持ちで、もちろん大丈夫です。
ブックマークもいただけるとうれしいです。
よろしくお願いいたします。