第八十八話 前世でのわたし・幼馴染の殿下
わたしはリーゼアーヌ。ラフォントノン公爵家の令嬢。
リランマノーラ王国のオディナデックス王太子殿下の婚約者。
今世で、オディリアンルンド殿下がわたしリンデフィーヌの手を握った時、わたしに前世の記憶が流れ込んできていた。
やさしいお父上と、冷たい継母がいて、子供はわたしだけ。
オディナデックス殿下とは幼馴染。
毎日というわけではなかったものの、二人で楽しく遊んでいた。
「わたしはあなたのことが好きです。大人になったら、わたしはあなたと結婚したいと思っています」
まだ思春期を迎える前のある日、殿下から言われた言葉。
殿下は、幼い頃から文武両道で、しかもやさしい人だった。
わたしには特にやさしく接してもらっていた。
幼い頃から、そうした殿下のことを尊敬し、大好きになっていたわたしは、
「わたしも殿下のことが好きです。喜んで、殿下のお嫁さんになります」
と殿下に応えていた。
その時から、殿下の為、いい王太子妃、そして王妃になろうと決心し、一生懸命努力をしていく。
殿下は幼い頃から、わたしに対しても砕けた言葉は使わず、ていねいな言葉づかいをしていた。
わたしは一度、殿下に、
「もう少し砕けた言葉を使っていただいても結構ですよ」
と言ったことがある。
でも殿下は、
「あなたのような素敵な女性には、ていねいな言葉を使っても、使いすぎることはありませので、砕けた言葉を使うことなどありえません」
と言ってくれた。
素敵な女性。
殿下と釣り合うほどの女性と自分では思っていないので、そう言われると恥ずかしい気持ちになる。
でも言われること自体はうれしい。
なんとか少しでも殿下のような素敵な人に近づけるように、努力していきたいと思う。
とにかく殿下は、その後もていねいな言葉をわたしに使い続ける。
それは、わたしとより親しくなった今でも同じ。
わたしに対する思いやりからきているのだろう。
とはいっても、わたしとの距離は離れてはいかない。
普通は、砕けた言葉を使った方が、より親しくなれそうな気がする。
しかし、殿下についてはそうではない。
殿下のていねいな言葉は、その一つ一つにわたしへの強い好意があり、より親しくなりたいという気持ちがこもっていた。
わたしは殿下のそういうところも好きなので。わたしの方も殿下に対して、ていねいな言葉づかいを幼い頃からしていた。
それだけでなく、わたしは殿下のことを尊敬しているので、自然とそういう言葉づかいになるのだと思う。
それは、今世でも同じだ。
わたしたちは順調に愛を育んでいった。
育んでいったのだけど……。
殿下には、交際を求めてくる女性たちが続出していた。
殿下は素敵な方なので、それは当然のことだと思う。
女性たちの方も素敵な方たちだったと思うのだけど、殿下はすべて断った。
ありがたいことだと思う。
わたしにも交際を求めてくる男性たちがいた。
わたしの方は病弱なので、わたしに言い寄ってくる男性たちはいないと思っていたのだけど、何人かもの男性たちが交際を申し込んできた。
わたしは殿下以外の人は全く興味がなかったので、当然断った。
しかし、その中の一人にそれでも迫ってくる隣国ブリュノレクド王国の王太子がいた。
ルッセソワ王太子殿下。
リランマノーラ王国とブリュノレクド王国は親しい間柄なので、ルッセソワ殿下はよくリランマノーラ王国を訪問し、舞踏会に参加していた。
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