第八十六話 対立 (マイセディナンサイド)
「あなたのようなものが、我が子の婚約者だなんて……。ふざけるのもたいがいにしてほしいものだわ」
「そうよ。お母様の言う通りだわ」
「あなたは我が子にふさわしくありません!」
「おにいさま。お母様の言う通り、今すぐこの女と別れるべきよ!」
母王妃と妹のルアンチーヌに対する攻撃。
ルアンチーヌが王宮に来るのを待ち構え、わたしの部屋で攻撃を行う。
それがほとんど毎日のように続いている。
二人はこれでルアンチーヌの心を痛めつけ、婚約者としてふさわしくない心の状態に持っていく。
そして、婚約破棄まで持っていこうとしているのだろう。
今日もルアンチーヌがわたしのところに来た途端、攻撃が行われた。
父国王が病床にあることが多くなってから、それはエスカレートしてきている。
わたしはそれが、ルアンチーヌに対する憎しみからだけだと思っていたが、どうもそれだけではないように思った。
父国王がこの世を去ってからの主導権争い。
これを強く意識しているように思った。
要するにわたしから主導権を奪いたいのだと思う。
もともと権力欲の大きい二人だ。
そう思ってもおかしくはない。
父国王に対しては、みじんもそういう姿を見せてこなかった二人だが、わたしに対しては、なにかにつけて、
「お前だけで政治を行うのは大変だから、わたしも政治に参画したいと思っている」
「おにいさまのお役に立つ為、お母様と一緒に政治に参画したいと思っているわ」
と言ってくる。
言葉は柔らかいが、主導権を握っていきたいという野心が節々に現れてきている。
今の内からわたしに対する優位性を持っていたいのだろう。
優位性を持っていけば、主導権を取ることができると思っているのに違いない。
冗談ではない。
いくら母や妹だからといっても、奪われてたまるものかと思う。
ではルアンチーヌを大切にしていけばいいのだろうか?
それも難しい。
彼女は、二人に厳しい言葉を投げつけられても、ビクともしない。
「わたしは正式に殿下の婚約者になったものです。いくら母王妃様や妹殿下が、『いますぐこの女と別れるべきよ!』とおっしゃったとしても、何の関係もありません。もう二度とそういうことはおっしゃられないでください!」
このような調子で反撃に出る。
これはいいと思う。
二人に対する適度な打撃になると思っていた。
しかし、その一方で、ルアンチーヌはわたしと二人きりになると、
「殿下、すぐにでもわたしと結婚してください。でないと、あのお二方が殿下から主導権を奪ってしまいます。わたしは殿下を愛しています。わたしなら、殿下をずっと支えていくことができます」
と結婚を強く迫ってきていた。
婚約はもうしてしまっている。
となると、結婚してもいいのではないか、と思うかもしれないが、そうはいかない。
わたしは結婚どころか、婚約もしたくはなかった。
もっと遊びたいという気持ちに、全くといっていいほど変化はない。
このままルアンチーヌと結婚をしてしまったら、何の意味もなくなってしまう。
二人に対して、全く遠慮しない彼女だ。
遊べなくなるどころか、今度は二人に主導権をを奪われる可能性だってあると思う。
二人に主導権を奪われるのも嫌だ。
しかし、ルアンチーヌと結婚するのも嫌だ。
どうすればいいのだろう、と思った。
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