第八十二話 殿下の決断
殿下は、父国王陛下より、わたしの待遇についての話をされていた。
そして、殿下がどう返答したのか、ということを伺いたかったのだけど……。
殿下は、その先をなかなか話そうとしない。
話をしようかどうか悩んでいる様子だ。
これは言いにくいことではないだろうか?
ということになると、わたしがこの王宮を一か月後に去らなければならない、という陛下の意見に賛成したのだということなのだろう。
殿下はやさしい方なので、躊躇しているに違いない。
これは、わたしの方から、話しかけるべきだろう。
そして、一か月後、この王宮から去ることになっても大丈夫だという意志を伝えて、殿下を安心させなければいけない。
そう思っていると、殿下は、
「これから話すことは、あなたにとってご迷惑になることかもしれません」
と言った。
「迷惑になることですか?」
「そうです。場合によってはわたしのことを嫌な人だと思うかもしれません。しかし、勇気を振り絞って、あなたに伝えることにしました」
殿下がそう言うということは、やはり、一か月で王宮を去らなくてはいけないということなのだろう。
まあ、一か月だけでも王宮にいることができるだけよしとしなければならないだろう。
この時間を使って、わたしに合った職を探すしかない。
殿下は再び言葉を切った。
いよいよわたしに、陛下の意見に賛成したことを伝えるのだと思う。
殿下としても、言いたくはないのだと思う。
その気持ちだけでもありがたいことだ。
このような方は他にいないと思う。
こういう殿下のやさしさを受け取っていきたい。
これからの一か月間を大事にし、できれば殿下との思い出を作っていきたいと思う。
殿下は、
「それでは話をしたいと思います」
と言って一回言葉を切った後、話をし始めた。
とても真剣な表情だ。
「わたしはあなたと今日出会うことができました。その出会いから今まで、わたしはあなたのことをずっと思ってきました」
わたしが思っていたことと話が全然違う方向に進んでいる気がする。
「わたしのことをずっと思ってきました」
というのはどういう意味だろう。
恋という意味だったらうれしい。
でもそれはありえない気がする。
いや、話がどう展開しても、最終的には国王陛下の意見に従わざるをえなかったということになるのだとは思うけれど……。
「そして、あなたの待遇のことで悩んでいました。客人のままでいるのが一番いいと思い始めていましたが、お父上に、『客人のままでいるわけにはいかない』と言われることは想像していましたので、客人のままで行くのは難しいかもしれないとも思っていました。お父上は、わたしの想像通り、そうおっしゃられました。ただ一か月という期限については、想像を越えていました。短い期限です。もう少し長い期限だと思っていたのです。お父上は、一か月という期限を譲る気は全くなさそうでしたし、お母上もお父上の意見に賛成していました。しかし、行くところがないあなたを、一か月が経ったからといって、王宮から去ってもらうということは、絶対にできることではありません。とは言っても、客人としての待遇を少し延長できたとしても、一年や二年も延長できるものではありません。そこで、わたしは決断することにしました」
殿下はそこで一回言葉を切った後。続ける。
「リンデフィーヌさん、ここからは、あなたの気分を害してしまうかもしれません。しかし、どうしても伝えなければならないことなのです」
もう覚悟はできていた。
でも緊張はどうしてもする。
殿下は、
「わたしはあなたに出会った時から好意を持っていました」
と恥ずかしそうに話し始めた。
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