第七十九話 こんなはずでは…… (マイセディナンサイド)
リンデフィーヌとの婚約破棄とルアンチーヌとの婚約については、父国王と母王妃と妹に伝えたのは、その日の夜のことだった。
前もって伝えなかったのは、父国王はリンデフィーヌとの婚約を進めていたし、母王妃は別の女性との婚約を望んでいたので、承諾しないだろうと思っていたからだ。
父国王はリンデフィーヌとの婚約が成立した後、病床にあることが多くなっていた。
気力が衰えてきていて、以前のように怒ることはできないと思っていたが、それでも反対をされ怒りの意思表示をされたら、この婚約破棄と婚約をするのは、少なくとも延期はせざるをえなくなる。
延期などしたら、ますますリンデフィーヌと結婚するしかなくなっていく。
それは避けたかった。
リンデフィーヌとの婚約破棄とルアンチーヌとの婚約を成立させてしまい、翌日の舞踏会でそれを発表する、ということを後で言えば、以前のように気力の充実していた時ならともかく、今の気力の弱った状態なら、多少怒ることはあっても、受け入れるしかないだろうと思っていた。
母王妃と妹の方はたいして心配していなかった。
わたしと同じく、リンデフィーヌのことが嫌いなのだから、婚約破棄をすれば、自分たちが推していた候補ではなくても、それで納得してくれるものと思っていた。
その夜、三人に話をした。
説得は容易だと思ってはいたが、緊張していなかったわけではない。
三人全員がわたしに反論することもありえたので、緊張するところはあった。
しかし、大丈夫だろうという気持ちの方が強かった。
父国王は、予想通り怒ったが、それは迫力のないものだった。
わたしが、
「もう決まったことです」
と冷たく言うと、もう何も言い返せなくなっていた。
母王妃や妹の方は、もう少し喜んでくれると思っていたが、そういう様子はなかった。
しかし、だからといって、反論することも特になかった。
これで、三人の合意も取り付け、後は舞踏会で発表するだけとなった。
翌日、わたしは意気揚々とルアンチーヌを伴い、舞踏会に出席した。
王室や貴族のものたちがたくさん出席している。
この中で、ルアンチーヌとの婚約を宣言すると思うと、心が沸騰してくる。
さぞ集まったものたちは喜ぶだろう。
反対するものも少しはいるだろうが、気にすることはないぐらいの少なさに違いない。
会場は祝福の声で包まれるのだ。
ダンスを二人で踊れば、わたしたちの魅力でみなメロメロになっていくことだろう。
そう思っていたのだが……。
「わたしはブルトソルボン公爵家のルアンチーヌと婚約することを宣言する!」
わたしがそう言った瞬間、拍手が鳴りやまない状態になるはずだった。
しかし、会場は静まりかえっている。
これはいったいどうしたことだろう?
拍手はどこに行ってしまったのだろう?
やはり、王室や貴族のものたちはリンデフィーヌを支持しているのだろうか?
そう思っていると、ようやく散発的な拍手が始まり、それとともに、拍手が少しずつ大きくなっていった。
一応は全員の拍手を受けた。
しかし、どうも心がこもっていない拍手のように思える。
その後、ルアンチーヌとダンスを踊ったのだが、こちらも心のこもった拍手は受けなかった。
予想以上にリンデフィーヌを支持しているものが多いような気がする。
どうして婚約者変更を支持しようとしないのだ。
わたしはこの王国の王太子だ。
婚約者を変えるのはわたしの自由だ!
そう参集者に叫びたいと思っていた。
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