第七十八話 楽しい生活の始まり (マイセディナンサイド)
わたしの怒りは急激に増してくる。
「お前は、わたしの決断を鈍らせることをした。わたしの婚約者はルアンチーヌ以外にありえないのだ。腹がどんどん立ってくる。今すぐここを立ち去れ!」
「わたしは殿下の婚約者なのです。立ち去りたくはありません!」
意地と意地。
「立ち去れ!」
「立ち去りません!」
このやり取りが続く。
わたしの怒りはますます増してきていた。
もうこうなると、決断せざるをえない。
「ことごとくわたしの意に沿わないやつだ。そこまで言うんだったら、もうわたしも腹を決めた。ルアンチーヌ、そしてイゾルレーヌ。お前たちに命じる」
わたしは一回言葉を切った。
怒りはもう頂点に達しつつあった。
そして、
「このものはわたしに無礼を働いた。よって、ブルトソルボン公爵家からこのものを追放することを命じる」
と言った。
そう言われて、リンデフィーヌは呆然としている。
これで抵抗する気力はなくなったようだ。
わたしは、側近二人を呼び、
「この女性を、公爵家の屋敷まで送ってやれ!」
と命令した。
「殿下、あんまりなお言葉。婚約者として、殿下の為にこれからも尽くそうと思っていましたのに……」
リンデフィーヌは弱々しく言うのがやっとだった。
これで後は部屋から追い出してしまえばいいと思った。
しかし、今度は、なかなか部屋から出ようとしない。
どこまでも抵抗するのか!
さんざんわたしに迷惑をかけているというのに!
全く嫌なやつだ!
と思い、側近たちに命じて無理やり部屋から追い出そうとした。
さすがにそこまでいくことはなく、渋々ではあるが、部屋を出て行く為に歩き出す。
しかし、側近たちに従って、ようやく歩き始めたと思ったら、ドアの前で立ち止まり、こちらに頭を下げた。
そして、ドアの外に出ると思っていたのだが、ドアの前で泣き出した。
少しの間であれば、まあ仕方がないと思っていた。
しかし、泣き続けていて外に出ようとしないので、わたしは腹が立ってきた。
そして、
「何をしている! 腹立たしいやつだ! いい加減にしてほしい!」
と強い口調で言った。
もうここにいてもしょうがないのだから、すぐに立ち去ればいいのにと思っていた。
わたしの言葉で仕方なく、リンデフィーヌは側近たちと一緒にドアの外に出ていった。
つらそうにしていたが、わたしには関係のないことだ。
やっとこの部屋から追い出すことができた。
時間はかなりかかったが、これで、リンデフィーヌとの婚約破棄とルアンチーヌとの婚約は成立し、リンデフィーヌの公爵家追放も成立した。
リンデフィーヌに対する同情心など全くといっていいほどない。
頭の中にあったのは、ルアンチーヌと楽しい生活をしていきたいということだけだった。
リンデフィーヌが部屋を去った後、ルアンチーヌは、
「殿下、好きです!」
と叫び、抱きついてくる。
わたしも我慢していたが、ルアンチーヌの方も相当我慢していたのだと思う。
わたしはルアンチーヌを抱きしめると、
「ルアンチーヌよ、わたしはお前を愛している。これからお前と楽しく過ごして行きたい」
と言った。
ルアンチーヌは、うっとりした表情で、
「殿下、わたしも同じ思いです。愛しています。楽しい思い出をたくさん作りたいと思っています」
と言って、わたしの想いに応える。
そばにいるリンデフィーヌの継母も、
「殿下、わたしもうれしく思っています。ルアンチーヌを婚約者にしていただいて、ありがとうございます。この子はきっと殿下の為になると思っています」
と言って微笑む。
婚約が決定して、喜ぶ二人。
これからなるべく長い時間、ルアンチーヌにはわたしを楽しませてほしい。
今までで一番いい女性だと思っているので、半年は持ってほしいものだと思っている。
「好きです、殿下。わたしは殿下を愛しています」
ルアンチーヌは、こちらに唇を近づけてきた。
そばにリンデフィーヌの継母がいても、もうわたしに恥ずかしいと思う気持ちはない。
重なり合う二人の唇と唇。
ここまで苦労して、わたしはようやく幸せを手に入れた気がしていた。
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