第七十五話 婚約破棄の言葉 (マイセディナンサイド)
リンデフィーヌが、婚約の破棄をすんなり受け入れてくれれば、わたしとしても楽な話だ。
しかし、今の時点で腹を立てている。
これから婚約破棄のことを伝えた場合、大きな抵抗が予想された。
わたしは、こうした時の対応策も検討していた。
面倒なことではあったが、仕方がない。
「リンデフィーヌとの婚約をなかったことにして、リンデフィーヌをなだめていく」
これがわたしの対応策だ。
婚約破棄することには違いないのだが、その意味を薄めていく。
対外的にも、リンデフィーヌとの婚約はなかったことにすればいいのだ。
その為に、明日の舞踏会も利用していく。
「リンデフィーヌと婚約したという話がありましたが、それは正式な話ではありませんでした。わたしはルアンチーヌと正式に婚約することを今日発表します」
とその中で宣言すればいいだろう。
これはいい対応策だと思った。
そうしていけば、リンデフィーヌも面目を立てることができるので、わたしとの婚約をあきらめて、ルアンチーヌとの婚約を受け入れてくれるだろう。
その対応策をこれから行うことにした。
わたしは、
「ここにいるルアンチーヌは、わたしの婚約者だ。この度、めでたく婚約したので、お前に紹介したくて、今日ここに来てもらった。異母姉が婚約者になるのだ。ブルトソルボン公爵家にとって名誉なことだし、お前にとっても親族、しかも、異母姉という近い親族が婚約者になったのだ。お前にとっても名誉なことだろう。さあ、みんなで喜ぼうではないか!」
と言って、わたしはルアンチーヌと婚約することを伝えた。
リンデフィーヌとの婚約破棄のことはまだ言わない。
ルアンチーヌとの婚約を喜ぶことによって、リンデフィーヌとの婚約をわたしが望んでいなかったということを心に刻み付ける。
それからわたしは、リンデフィーヌに婚約をあきらめてもらう為、努力をした。
しかし、リンデフィーヌは抵抗し、あきらめようとはしない。
次第にわたしは、いらだってきた。
いつものわたしだったら、とっくの昔に、婚約破棄のことを伝えたところだ。
このわたしが、せっかく配慮してやっているというのに!
わたしは決断した。
「もうそろそろわたしも我慢の限界だ。お前がわたしの配慮を理解しないのなら、言うしかない」
と言った後、続けて、
「お前のことを傷つけたくないから、婚約のことはなかったことにしようと思ったのに。そうすれば、お前にとって一番つらい言葉を言うことはなかったのだ」
と言った、
そうは言ったものの、別にリンデフィーヌのことは傷つけてもかまわないと思っていたし、一番つらい言葉を言うことも別に気にしてはいない。
最大限の配慮をわたしはした。
リンデフィーヌがわたしの配慮に応えてくれないのがいけないのだ。
そして、決定的な言葉。
「わたしはお前のことが嫌いだ。わたしマイセディナンは、リンデフィーヌとの婚約を破棄する」
わたしはそう冷たく言った。
これでもうリンデフィーヌはわたしに抵抗する気力はなくなり、婚約破棄を受け入れるだろう。
結構な時間がかかり、疲れてきているが、受け入れてくれればそれでいい。
後、公爵家からの追放のことが残っているが、ここまで来ればどっちでもよくなってきた。
もうしばらくの間はルアンチーヌのことだけ想っていたい。
ルアンチーヌとの生活を楽しむことができると思うと、だんだん心が高揚してくる。
今すぐにでもルアンチーヌを抱きしめたい。
ルアンチーヌとの生活にもやがて終わりがくるだろうが、それはその時のことだ。
今の生活を楽しむことができればそれでいい。
わたしはそう思っていた。
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