第七十話 王宮へ入っていく馬車
馬車は、夜に入りかけた頃、王都に入った。
雪は今も降り続いている。
馬車に乗っていた間、ずっと降っていたようだ。
わたしは途中、眠っていたのでわからなかったが、吹雪になった時もあったとのこと。
もし、一人で歩いていたら、疲労がますますたまっていき、途中で行き倒れていた可能性は強いと思う。
それだけでもとてもありがたいことだと思う。
しかも、こうして王都まで馬車に乗せていただき、当分は王宮に滞在していいという。
救っていただいた殿下には感謝の気持ちでいっぱいだ。
その感謝の気持ちは、言葉では伝えている。
しかし、それだけでは足りない気がする。
今すぐ抱きしめていただいてもいいくらい。
そして、唇を重ね合ってもいいと思っている。
さすがにそれ以上となると、心の準備が必要になってくるけれど……。
殿下はわたしの隣で微笑んでいる。
抱きしめていただくということはともかくとして、わたしのことをこれからどんどん好きになっていただけるとうれしいなあ……。
王都は、わたしのいたブリュノレンス王国の王都よりも栄えているようだった。
なんとってもまちの規模が大きいし、人々にも活気があるように思える。
働く場所もたくさんありそうだ。
もし王宮から去ることになったとしても、職について生きていけることができるに違いない。
もちろんどういう職についたとしても、一人前になるのには時間がかかるだろう。
つらくて苦しいことも多いと思う。
それでも、公爵家でのつらい日々に比べたら、まだましだろうと思っている。
そして、追放されてしまい、その後、賊に襲われて生命を失いかけたことに比べても、ましだろうと思っている。
しかし、せっかくわたしを殿下が王宮に滞在をさせてくださるのだ。
王宮を去った後のことも考える必要はある。
いつ去ってもいいように、心の準備はしておくべきだろう。
でもそれはまだ先のこと。
まずは、殿下のお役に立てることをいろいろ考えていく必要があるだろう。
ブリュノレンス王国は、財政が厳しい為、人々に重税をかけるようになっていた。
それが、ブリュノレンス王国の王都、そして全体の活気を失う大きな要因になっていた。
わたしは、その点も含め、マイセディナン殿下に領地経営の改善についての提言をしようとしていたけれど、それをする前に婚約破棄をされてしまった。
殿下ともう少し仲良くなっていけたら、提言をしたいという気持ちがだんだん強くなってきていた。
これが殿下のお役に立てる一番のことだと思う。
この王国のことはよくわかっていない。
もしかしたら、うまく経営が出来ているのかもしれない。
しかし、領地経営をしていると、多かれ少なかれ問題というものは発生するようだ。
この王国にどんな問題があるのかはわからない。
しかし、それで殿下が悩んでいたり、苦しんでいたりするのならば、少しでも殿下の負担がなくせるようなお手伝いがしたい。
わたしは公爵家で、お父様の領地経営のお手伝いをしてきた。
その経験は生かせると思う。
殿下のおそばで、殿下になるべく長く尽くしていきたい。
そう思いながら、まちを眺めていた。
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