第六十九話 婚約破棄の決意 (マイセディナンサイド)
継母は威儀を正した後、
「殿下、どうかお願いでございます。ルアンチーヌを婚約者としてお迎えください。よろしくお願いします」
と言って頭を下げる。
「お願いします」
ルアンチーヌもそう言って頭を下げた。
ルアンチーヌと婚約するべきか、それともしないべきか?
大きな人生の岐路がやってきた。
できれば婚約はしたくない。
リンデフィーヌとの婚約を破棄して、ルアンチーヌと婚約したのでは、あまり意味がないように思える。
婚約の状態が続くことに、何の変化もないからだ。
もちろんルアンチーヌの容姿は、わたしの好みで、遊び相手としてなら多分申し分がないように思う。
しかし、二人の目的は、わたしと婚約をすることだ。
それ以外の話は受け入れないと思う。
どちらかが譲らなければ、いずれルアンチーヌのことはあきらめるしかなくなってしまうだろう。
こちらの方も、婚約はしたくないので、仕方がないとは思う。
しかし、せっかくここに好みの女性が現れたのだ。
惜しい気持ちはどうしてもある。
わたしはしばらくの間、悩んだ。
継母とルアンチーヌはその間も、
「ルアンチーヌを婚約者にお願いします」
「殿下、よろしくお願いします」
と頭を下げ続ける。
ルアンチーヌの一生懸命懇願する姿。
わたしの為ではなく、自分の為ではあろうが、それでも心は動かされるものがあった。
リンデフィーヌと婚約を続けるよりはましだと思った。
リンデフィーヌと婚約破棄をする為には、もともと「気に入らない」というだけではだめで、新しい婚約者を用意する必要があった。
その婚約者としてルアンチーヌは、家柄は申し分ない。
何よりも、わたしの好みの女性だ。
リンデフィーヌとの婚約破棄をまずしなければ、話は進まない。
とにかく婚約を破棄した後、ルアンチーヌと婚約をする。
飽きたら婚約を破棄して、また新しい女性を探せばいいだろう。
そう思ったわたしは、
「あなたたちのお願いを受け入れることにしよう。ルアンチーヌよ。わたしはあなたと婚約することにする」
と言った。
「殿下、今、何とおっしゃったのでしょうか?」
ルアンチーヌが聞いてくる。
「わたしはあなたと婚約すると申したのだ」
二人は、わたしのその言葉を聞くと、あっという間に満面の笑みになった。
「ありがとうございます。殿下。これでわたしの面目も立ちます」
「ありがとうございます。殿下、これからよろしくお願いしたいと思います」
喜び合う二人。
喜んでもらうこと自体はいいと思う。
しかし、わたし自身はそれほど喜ぶ気持ちにはなれなかった。
むしろ少し冷めた気持ちだった。
これからリンデフィーヌとの婚約を破棄し、ルアンチーヌと婚約をしなけれならない。
面倒なことは嫌いなので、気分はいいとは決していえない。
婚約したくなかったという気持ちは、どうしてもある。
遊び相手であれば、今頃はいい気分になっていただろうに……。
そう思うのだったが、どうにもならない。
もうあれこれ悩んでもしょうがない。
まずは今日これからルアンチーヌとの逢瀬を楽しもうと思う。
きっと、わたしを満足させてくれるはずだ。
これからの計画は、その後、立てていけばいい。
少し二人と話をした後、わたしは。
「ルアンチーヌよ。この後、時間はあるだろうか? わたしとしては、もっとあなたと仲良くなりたいと思っている。わたしの部屋に来てほしい」
と少し恥ずかしがりながら言った。
これからわたしたちは二人だけの世界に入り、仲良くなっていく。
それに対し、ルアンチーヌも恥ずかしそうに、
「殿下のおっしゃる通りにいたします。よろしくお願いします」
と言った。
「面白い」
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