第六十八話 複雑な関係 (マイセディナンサイド)
「母親が違うという点では、ルアンチーヌだって同じなのだから、あなたは嫌っても良さそうだが、その点はどうなのだ?」
わたしがそう言うと、
「この子は、あの子と違い、わたしのお気に入りです。わたしには実の娘がいませんので、自分の娘のようにかわいがって育ててきました」
「どうしてそこまでリンデフィーヌとルアンチーヌで扱いに差があるのだ?」
わたしにはそこが理解できない。
「それは、この世を去った公爵閣下が、あの子の母親のことを懐かしく思うことが多かったからです。今の妻はわたしだというのに、そういう態度を取られると、腹が立ってしょうがありませんでした。その母親の子だと思うと、憎しみの心が湧いてくるのです。その点、ルアンチーヌの母親については、懐かしがることはほとんどありませんでしたので、憎しみなどはありません。ルアンチーヌに対しては、むしろ、実の母親がいないということで、かわいそうな気持ちになり、わたしが育てていかなくては、と思いました。ですから、わたしはルアンチーヌを大切に思って、ここまで育ててきたのです」
継母は、少し涙ぐみながら話す。
想像以上に複雑な関係だ。
それにしても、母親が憎いからといって、その子供をそこまで憎むものなんだろうか?
よくわからない。
まあ、わたしには関係のない話ではある。
継母の話は続く。
「わたしはルアンチーヌを公爵家からの婚約者候補にしたいと思っていました。しかし、それはかないませんでした。リンデフィーヌが婚約者候補に決まった時、ルアンチーヌもつらかったでしょうが、このわたしもつらい思いををしました。それだけならまだしも、殿下の正式な婚約者になってしまいました。しばらくの間は悲しみにくれていましたが、やがて、このまま倒れているわけにはいかないと思いました、あの子とその母親に絶対勝ちたい! なんとしてルアンチーヌでもを殿下の婚約者にする! そう心に決めたのです」
継母はそう言って、一回言葉を切った。
涙ぐんでいたと思っていたら、もう涙をおさめている。
「殿下とリンデフィーヌはもともと性格的に合わないと思っていました。その内、ルアンチーヌのことが嫌になり、つらい思いをするだろうと思っていました。その時、殿下をお救いできるのはルアンチーヌだと思っていたのです」
「それで、わたしを救いたいと思って、わたしのところに来たのだな?」
「そうでございます。ルアンチーヌであれば、きっと殿下は気に入っていただけると思います。そして、リンデフィーヌから殿下を救うことができると思っています」
継母の話を聞いていて、継母はたいしたものだと思った。
わたしを救いたいと最後は言っているが、それはおまけのように思える。
おまけは言い過ぎかもしれないが、少なくとも主目的ではないとだろう。
わたしのことなど、本音のところでは、ほんの少ししか思っていないに違いない。
リンデフィーヌとその母親に対する憎しみが、すべての出発点であり、ルアンチーヌをわたしと婚約させるのも、その二人に勝ちたい一心なのだと思う。
継母は、そういう欲求を一番の優先順位として、わたしに伝えてきた。
普通だったら、少し敬遠しかねない態度だが、わたしはそういう人間は。決して嫌いではない。
とはいうものの、相手の言いなりにはならないようにしなければならない。
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