第六十七話 継母と異母姉のアプローチ (マイセディナンサイド)
リンデフィーヌが王室の一部の人たちと話をし始めた頃。
リンデフィーヌの父親がこの世を去った。
しばらくはわたしのところに来ることができなくなった。
もともと好意は持っていなかったし、彼女がここに来るようになってからも、好意を持つようなことはなかったので、彼女が来なくなってからも特に寂しく思うことはなかった。
このまま婚約破棄まで進めばいいのに、とも思っていた。
しかし、リンデフィーヌは芯が強い。
わたしのところに再び来るようになると、以前にも増して明るい微笑みを向けるようになった。
彼女に心を動かされた王室の人たちの方から、
「リンデフィーヌ様は、いつも笑顔をわたしたちに向けてくださり、癒してくださるお方」
「才色兼備でやさしいお方」
といういい評判が立つようになってきた。
わたしもその笑顔には魅力がないとまでは思わなかったので、少しずつではあるが、彼女と話すようにはなっていった。
しかし、こうして王室の人々がリンデフィーヌに心を動かされていくということは、結婚というところまで進んでしまうということだ。
既に二人の計画は破綻しつつあった。
「どうしてあんな人に心が動かされていくのよ」
「全くもって腹が立つ」
「悔しくてしょうがない」
「最初はうまくいっていて、このままいけば、婚約を破棄できると思っていたのに」
「このままでは婚約破棄など、とうてい無理な話だわ……」
二人は、口々にわたしに言ってくる。
聞いている内にだんだん嫌になってきた。
とはいうものの、二人の計画がうまくいかないのではどうにもならない。
しかし、このままにしていては、結婚というところへ到達してしまうだろう。
なんとかしなければならない。
悩み始めていたわたしのところに、ある日、来訪者があった。
リンデフィーヌの継母と異母姉だった。
来訪の話を聞いた時、最初は、いったい何をしに来るのだと思った。
しかし、これから親族になる人たちである以上、会わないわけにはいかなかった。
気分がすぐれないまま、会うことになったのだが……。
「ルアンチーヌと申します、よろしくお願いします」
部屋に入ってきて、あいさつをする異母姉のルアンチーヌ。
リンデフィーヌと違い、ゴージャス。
わたしは彼女のことを魅力的な女性だと思った。
リンデフィーヌに対しては、全くなかった想いだ。
遊び相手にして、楽しんでいきたいと思うようになってきた。
とはいうものの、まず来訪目的について聞く必要があった。
「それで今日ここに来られたのは?」
わたしがそう言うと、継母は、
「殿下に提案をさせていただきたいと思いまして、今日はこちらに参上させていただきました」
と言った。
「提案とは?」
「単刀直入に申し上げます。このルアンチーヌを殿下の婚約者にしていただきたいのです」
ただの紹介ではなく、婚約の話だった。
会ってからすぐに婚約の話を切り出す。
たいしたものだ。
その態度自体は決して嫌いではない。
しかし、遊び相手の紹介だと思っていたのに、婚約というところに話がいってしまうと、さすがに困惑してしまう。
とはいうものの、ルアンチーヌの容姿はわたしにとって魅力的だ。
まずは話を聞くことにしたい。
そうわたしは思った。
「わたしにはリンデフィーヌという婚約者がいる。そして、あなたは継母とはいうものの、その母親だ。なぜルアンチーヌを婚約者にしたいなどと言うのだ?」
わたしがそう言うと、
「これも単刀直入に言いましょう。わたしはあの子が嫌いだからです。ですから、ルアンチーヌを婚約者にしていただきたくて、今日、ここに参上させていただいたのです」
と言って継母は冷たく笑った。
「面白い」
「続きが気になる。続きを読みたい」
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