第六十六話 作り笑顔での応対 (マイセディナンサイド)
こうしてわたしは、リンデフィーヌと婚約した。
嫌な気持ちに変わりはない。
しかし、今は耐えるしかないと自分に言い聞かせていた。
そして、また新しい遊び相手と出会えることを希望としていたのだった。
数日後から彼女は、一週間に二度ほどわたしのところを訪れようになった。
会うこと自体も苦痛だったが、仕方がない。
作り笑顔で応対するしかなかった。
おしゃべりもうまくできない。
義務的に会話をしているような状態だった。
普段のわたしだったら、その巧みな話術で女性を魅了していく。
でも彼女に対しては、話術を使う気にもなれない。
こういう気持ちになるくらい、わたしは彼女に好意が持てなかった。
それにしても、なぜこの女性は、ここまでゴージャスさがないのだろう。
あきれてものがいえない。
すぐにでも婚約を破棄したいところだったが、それもできない。
どうすればいいのだろう、と思っていたのだが……。
わたしに味方がついた。
母王妃と妹だ。
いや、味方というよりは、結果的に援護になっていると言った方がいいと思う。
母王妃は、わたしに婚約をすすめるところまでは、父国王と意見が同じだった。
しかし、婚約者の選定の時に意見が割れた。
母王妃は別の候補者をおしていて、妹もそれに賛成をしていた。
父国王はその意見を押し切って、リンデフィーヌを婚約者にしたのだ。
母王妃も妹も、表面上は父国王に従ったが、内心は憤懣やる方ないという状態だったようだ。
そして、わたしとリンデフィーヌの婚約が決まった時から、リンデフィーヌとの婚約を破棄する為に動き始めた。
二人がとった手段は、イジメ。
あいさつを無視するところから始まる冷たい態度を取り続け、婚約者でいられなくなるほどの打撃を心に与えるというものだ。
王室内の人たちにも協力を呼びかけた。
その結果、父国王以外の王室のほとんどの人たちは、彼女に対して冷たい態度をとるようになった。
同じ婚約破棄を目的にしてはいても、婚約破棄をした後についての対応は、二人とは違う。
わたしはリンデフィーヌとの婚約を破棄した後は遊びたいと思っているのに対し、二人は自分たちの推していた婚約者候補を婚約者にしたいと思っている。
わたしとしては、婚約そのものが嫌なのだから、二人の思っていることが実現するのも避けたい。
とはいうものの、婚約の破棄をまずしなければ、その先に進むことさえもできないと思っている。
二人の作戦がうまくいけば、少なくとも婚約破棄までは進むことができる。
二人はわたしの味方とまでは言えないまでも、援護の形にはなるだろう。
そう思ったわたしは、二人の作戦がうまくいき、婚約破棄まで進むことを願った。
しかし……。
リンデフィーヌは想像以上に芯が強い女性だった。
王室のほとんどの人たちが、冷たい態度を取っていたにも関わらず、微笑みを忘れずに接していた。
普通だったら心が沈んでしまい、笑顔どころではないだろう。
まあそれも長くは続くまいと思っていたのだが……。
驚くべきことに、王室の中に、少しずつ彼女と話す人たちが現れ始めた。
そういう人たちが多くなれば、二人の計画は壊れてしまう。
しかし、まだその人数は、少数でしかなかったので、そんなに心配することではないだろうと思っていた。
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