第五十七話 殿下と仲良くなっていきたい
「リンデフィーヌさん、あなたは強い人だと思います。一人でたくましく生きようとされる」
殿下は、感動しているようだ。
「いえ、たいしたことではありません。貴族ではない以上、自分で働いて生きていかなくてはいけませんから」
「いや、たいしたものだと思います。わたしはリンデフィーヌさんを尊敬します」
「尊敬だなんて……」
「リンデフィーヌさん、よろしければ、あなたのことを教えてください。お願いしたいと思います」
「わたしのことなど、聞いてもつまらないだけだと思います。それでもよろしいでしょうか?」
「わたしはあなたのことをもっと知りたいと思っています。つまらない、だなんておっしゃられないでください。嫌であればもちろん無理にとはいいません」
殿下がわたしにお願いをしている。
わたしのことをもっと知りたいと言っている。
これは受けなくてはいけないだろう。
「わたしは先程も申しましたが、ブリュノレンス王国の公爵家の出身です」
わたしは話をし始めた。
そして、
「ブリュノレンス王国の王太子殿下と婚約をしたのですが、婚約を破棄されてしまいました」
と殿下に伝えた。
「婚約を破棄されてしまったのですか?」
驚いた表情の殿下。
先程は、公爵家を追放されたことを話している。
それだけでも嫌われるかもしれないのに、婚約破棄されたという、さらに嫌われそうなことを言ってしまった。
これで、
「婚約破棄をされ、家を追放されるほどの女性だ。きっと性格が悪い女性に違いない」
と思われて、全面的に嫌われてしまうだろうか?
そして、いきなり、
「あなたのような人は、この馬車に乗る資格はありません。今すぐ降りなさい」
と殿下に言われてしまうかもしれない。
しかし、それでも殿下には言っておかなくてはならなかった。
殿下と仲良くなっていきたい。
表面上の仲の良さだけではなく、心の底から仲良くなっていきたい。
それには、こういうつらく、苦しい思いをした経験も話さなくてはならない。
それで嫌われるのであれば、その時は縁がなかったものとしてあきらめるしかない。
そう思っていると、
「この王国にも、マイセディナン殿下の女性関係の噂が入ってきていました。女性と次々に付き合っては別れていたという噂です。わたしは聞きたいとは思っていなかったのですが、どうしても耳に入ってしまうのです。そのマイセディナン殿下の婚約者だったのですね?」
と殿下は言ってきた。
「そうでございます。殿下にこのような話をしてしまいまして、申し訳ありません」
わたしはそう言った後、頭を下げた。
それにしても、マイセディナン殿下の女性についての噂がこの王国にまで伝わっているとは思わなかった。
わたしが頭を上げると、殿下は、わたしを包んでくれるようなやさしい表情で話をし始める。
「それは、大変なご苦労をされたと思います」
「いえ、苦労だなんて……」
「ただでさえ、王妃になっていく方は大変だと思いますのに、より一層苦労をされてきたのだと思います。それなのに、婚約を破棄されてしまうなんて……」
わたしの想像と違い、殿下はわたしに心から同情している。
それだけでもホッとする。
「あなたが婚約された理由は、だいたい想像はつきます。多分、新しい女性に心を奪われてしまったのだと思います。どうしてこういう素敵な方との婚約を破棄してしまったのでしょう。わたしはあなたが気の毒でなりません」
「お気づかい、ありがとうございます」
「婚約破棄されて、その後、公爵家まで追放されてしまったのですね」
「そうでございます」
「つらかったでしょう……」
声をつまらせる殿下。
「面白い」
「続きが気になる。続きを読みたい」
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