第五十四話 マイセディナン殿下はわたしのもの (異母姉サイド)
殿下は、婚約破棄のことを言う前に、
「お前のことを傷つけたくないから、婚約のことはなかったことにしようと思ったのに。そうすれば、お前にとって一番つらい言葉を言うことはなかったのだ」
と言っていた。
殿下にしてみれば、リンデフィーヌに配慮したというのに、その配慮を受け入れてくれなかったことを残念に思っているのだろう。
もちろんそれは、殿下の身勝手な発想だ。
まあわたしにとっては、どちらでもいいこと。
これで、リンデフィーヌは致命的な打撃を受けたはずだ。
婚約破棄を受け入れるしかないだろう。
そう思っていたのだけど……。
リンデフィーヌの抵抗は続く。
そして、
「わたしは殿下との婚約を続けたいと思い続けています、一度は婚約をした殿下とわたしです。偶然に婚約をした仲だとは思えません。殿下とわたしは縁があると信じています。今はまだ仲が進んでいきません。それどころか、殿下に婚約を破棄されようとしています。しかし、婚約を続けていけば、きっとお互いに理解が進み、仲良くなっていけると信じています。どうか、婚約を続けていただくようお願いします」
と言った。
この言葉に、殿下は少し心を動かされ始めているようだ。
このまま心を動かされていくと、公爵家の追放どころか、婚約破棄の延期につながっていってしまう。
そして、可能性は低いとはいうものの、婚約を続けて結婚へと結びついていくことだってないとはいえない。
わたしの心は再び動揺し始めた。
殿下、思い直すことはお止めください。
そう願っていると、思いが通じたのか、殿下はわたしの手を握り、抱き寄せてくる。
やっぱり殿下はわたしのことを婚約者だと思って下さっているのだ。
心が沸き立ってくる。
そして、殿下とわたしは抱きしめ合った。
「殿下、好きです」
「わたしもお前のことが好きだ」
「殿下……」
「ルアンチーヌ……」
唇と唇を重ね合っていくわたしたち。
ああ、殿下。
殿下はわたしのもの。
ずっと、ずっと、わたしのもの!
リンデフィーヌは今度こそ大打撃を受けたと思った。
わたしたちの仲睦まじい様子を見せつけてあげたのだから。
まだ少し恥ずかしさはあるのだけれど。
しかし、それでもリンデフィーヌの抵抗は続く。
「婚約がなかったことになろうと、婚約を破棄されようと、殿下に受け入れられなかったことには変わりはありません。それが悲しいのです。これでも殿下にふさわしい女性になろうと一生懸命努力してきましたのに」
と涙声になりながら言っている。
殿下は、また少し心を動かされてしまっているようだ。
このままでは、また婚約破棄延期という方向につながりかねない。
もうリンデフィーヌにはいい加減にしてほしいと思った。
わたしは殿下に決断をうながすべく、
「殿下、このものの言うことを聞いてはなりません!」
と強く言った後、続けて、
「殿下、もう婚約破棄のことは決まったのです。殿下にはわたしという婚約者がいます。このようなものの言うことは、一切聞くことはなりません」
と言った。
この後、継母も殿下の決断をうながしていた。
しかし、わたしの言葉の方がはるかに殿下を勇気づけ、決断をうながしたと思っている。
それからもリンデフィーヌは抵抗していたが、わたしの言葉があってからは、殿下のリンデフィーヌに対しての表情は厳しいものに変わっていった。
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