第五十二話 マイセディナン殿下と仲良くなっていくわたし (異母姉サイド)
うれしいことはまだまだ続いていく。
殿下は、
「ルアンチーヌよ。この後、時間はあるだろうか? わたしとしては、もっとあなたと仲良くなりたいと思っている。わたしの部屋に来てほしい」
と少し恥ずかしがりながら言ってきたのだ。
仲良くなる為に、殿下の執務室でこのまま話を続けるのではなく、殿下の部屋に行くということ。
それは、二人だけの世界に入っていくということだろう。
うれしい。
でも恥ずかしい。
一番うまくいった場合は、そうなることも想像はしていないこともなかったが、まず今日は無理だろうと思っていた。
今日ある程度仲良くなり、二三度会って仲が進んだ後のことだと思っていた。
まだ心の準備が整っているとは言い難いところがあり、恥ずかしい気持ちが強くなってきているが、そんなことは言っていられない。
このチャンスを生かすのだ。
わたしは恥ずかしさを抑えながら、
「殿下のおっしゃる通りにいたします。よろしくお願いします」
と言った。
その後、殿下の部屋で、わたしたちは二人だけの世界に入っていった。
今日会った最初の頃は、冷たい態度をとっていた殿下も、すっかりわたしのことを気に入ってくれた気がする。
継母より殿下の好みの女性になるよう、いろいろアドバイスを受けた。
悔しいことではあるが、それは役に立ったと言わざるをえない。
これで殿下との仲が一気に進んだと思う。
その日の夜、公爵家に戻った後、継母に得意そうにわたしに話をした。
「殿下が冷たい態度を取ってきたので、これはいきなり婚約の話をするしかないと思ったのよ。あなたはわたしには及ばないけれど、ゴージャスで殿下の好みだから、話をしていけばいずれ機嫌は直っていったと思う。でも話をすればするほど婚約の話がしにくくなって、多分、遊び相手として認識されるようになったでしょうね。それを避けることができて、婚約の約束するところまでは話を持っていけたのはわたしのおかげよ。これからもわたしを大切にするのよ。よろしくお願いするわね」
そう言って、わたしを見下すように笑う継母。
今日については、継母のおかげと言わざるをえない。
悔しい。
でもこれからは、わたしの力で殿下の心をわたしのものにしていく!
わたしはそう思うのだった。
こうして殿下とわたしは、婚約することを前提として付き合い始めることになった。
わたしたちは、会う度に二人だけの世界に入っていく。
楽しい時間だった。
殿下はどんどんわたしのことが好きになってきている。
うれしいことだ。
リンデフィーヌと殿下は一度もそういう世界に入ったことがない。
そのこともわたしに優越感を与えるものだった。
しかし、正式な婚約者はまだリンデフィーヌのまま。
殿下がリンデフィーヌとの婚約を破棄し、わたしが正式な婚約者にならなければならない。
わたしは、すぐにでも婚約者になりたかった。
殿下は、婚約を約束してはくれているが、今までの女性の扱いからすると、いつ心が変化するかわからない。
正式な婚約者になれば、その懸念は相当軽減されると思う。
もちろんそれだけではだめで、その後、結婚して王太子妃にならなくてはいけないが、まずは正式に婚約しなければならない。
しかし、殿下はなかなか動こうとしなかった。
殿下の婚約に対する意識そのものの問題もあったのだろうが、一番大きいのはリンデフィーヌの評判が高くなってきていたということだった。
「このような情勢で婚約を破棄してしまえば、王室や貴族たちの反感を買う可能性がある。お前にそういう反感を与えて、心を傷つけたくない」
そう殿下は言っていた。
殿下がわたしのことを思っていってくれたのかどうかはわからない。
しかし、このまま時が過ぎていけば、婚約破棄そのものができなくなっていく。
わたしは、
「そろそろ決断する時だと思います。わたしを殿下の正式な婚約者にしてくださいませ」
ということを殿下と会う度にお願いをするようになっていた。
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