第四十九話 マイセディナン殿下に会うわたし (異母姉サイド)
わたしは継母の指示に従い、殿下好みの女性になる努力を続けた。
継母の思い通りに動くのは嫌だが、仕方がない。
そういう日々が続いていた時、父がこの世を去った。
悲しいことには違いなかった。
しかし、わたしの頭の中は、それ以上に殿下の婚約者になりたいという野望で一杯だった。
継母も同じだったと思う。
公爵家の当主になったという意識も薄かった。
領内経営など、わたしであればきちんと運営できるだろうと思っていたし、領民のことなど、税を取り立てる対象としか思っていなかったからだ。
殿下の好みの女性になってきたと思ったわたしたちは、殿下のところに行き、初対面で心をつかんでしまうことにした。
殿下のもとを訪れること自体は、リンデフィーヌの継母であり、異母姉なので、支障はない。
しかし、なかなか行動することはできなかった。
というのも、殿下は好き嫌いが激しいと評判で、一度嫌いだと思われたら、もう好きになることはないと言われていた。
初対面でいい印象を与えられなければ、チャンスは限りなく少なくなってしまうだろう。
また、好きになってもらったとしても、別の問題があった。
というのも、殿下は遊び好きだ。
わたしをただの遊び相手としか思ってもらえない可能性もある。
今まで、十人以上の女性たちと付き合ってきて、その全員と別れている方だ。
いや、別れたというより、捨てたという方が正しいだろう。
そういう人たちと同じ立場にはなりたくない。
ただの遊び相手として好きになられても意味がない。
わたしは殿下と婚約し、結婚がしたい。
その方向にもっていく為には、初対面で、
「婚約し、結婚したい」
と殿下に思ってもらわなければならない。
それだけに慎重にならざるをえなかった。
しかし、わたしたちが躊躇している内に、リンデフィーヌの評判は王室内や貴族の間でどんどん高くなってきていた。
これはわたしたちにとって予想外のことだった。
婚約者になった頃、支持していたのは、国王陛下ぐらいなものだった。
評判がこんなにも高くなってくるとは……。
このままでは、たとえ殿下がリンデフィーヌのことを嫌がっていたとしても、周囲のものが結婚まで推し進めてしまうだろう。
わたしたちは決断した。
多分、一回のみであろうチャンスにかけることにした。
そして、わたしは継母と一緒に殿下のところへ行くことになった。
「わたしの言う通りにすれば、きっと大丈夫」
馬車の中で、わたしに話しかける継母。
しかし、その声には、弱々しいところがある。
さすがに継母も緊張しているようだ。
わたしも、
「きっと、いい印象を与えることができると思います」
と継母には言ったが、どうしても緊張せざるをえなかった。
王宮に着くと、執事に殿下の執務室に案内され、部屋に入った。
殿下は、とてもハンサムな方だった。
こんなに素敵な方がこの世に存在するとは……。
わたしは殿下に一目惚れをしてしまった。
しかし、殿下は気乗りのしていない表情をしていた。
「それで今日ここに来られたのは?」
とわたしたちに冷たく言う。
前途は多難だと思わざるをえなかった。
それでもここに来たからには進まなければならない。
わたしの魅力で、殿下の心を動かしていくことはできるのだろうか?
自信はなかなか湧いてこない。
なんとかしなければと思ってはいるのだけど……。
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