第四十六話 ようやくようやくにして手に入れた婚約者の座 (異母姉サイド)
わたしはルアンチーヌ。ブルトソルボン公爵家の令嬢。
今日からマイセディナン王太子殿下の婚約者となった。
ようやくにして手に入れた婚約者の座。
わたしは踊り出したくなるほどうれしかった。
これで、この王国は殿下とわたしのものだ。
殿下を通じて、贅沢三昧の日々をおくりたいと思っている。
それにしても、旧婚約者にしてわたしの異母妹リンデフィーヌ。
わたしにとっては腹立たしい存在だった。
礼儀正しく、才色兼備で、しかもやさしい。
わたしに対しても、よく心を配っているとは思う。
普通であれば大切にしなければ、と思うかもしれない。
しかし、そういう妹だからこそ、嫌な存在なのだ。
なんといっても、父はリンデフィーヌの母のことを大切に思っていた。
その思い出を聞かされることもあった。
もうこの世を去ってから長い時が経つというのに……。
わたしの母のことを思い出すことはほとんどなかった。
わたしの母だって、父の妻だったのだ。
もう少し思い出してくれてもよかったと思う。
その娘であるリンデフィーヌが嫌いになっていったのも当然だと思う。
父は、今の継母も含めて、
「三人仲良くしてほしい」
と言っていたが、冗談ではない。
リンデフィーヌと仲良くすることなど、絶対にできない。
継母のことも好きな方ではない。
しょせん、わたしの実の母親ではないからだ。
それに、ある時期までは、継母はわたしに対して、決していい扱いはしてこなかった。
嫌味をそれこそ何十度言われたことだろう。
ただ、継母には子供が出来なかった。
その為だろう。
わたしが思春期を迎える頃から、わたしに対する扱いは柔らかくなっていった。
男子の後継ぎがいないこの公爵家では、わたしが後継ぎの第一候補になるからだ。
わたしを意のままに操り、この家の実権を握りたいと思ったに違いない。
継母のわたしとリンデフィーヌの扱いの差は、こちらも驚くほど大きくなっていく。
リンデフィーヌに対しての仕打ちは、イジメといっていいほどのものだった。
リンデフィーヌは一生懸命継母に尽くそうとしているにも関わらず、それは続く。
だからといって、同情する気にはなれなかった。
父がわたしの母のことを思い出そうとせず、リンデフィーヌの母との思い出を大切にしようとしている以上、リンデフィーヌはイジメられても当然だと思っていた。
それよりも、継母と手を組むことだ。
わたしが当主になって、安定した統治をするには継母の協力が絶対に必要だ。
少なくとも最初の内は。
二三年経った頃、もう一人でも大丈夫という段階になったら、継母を隠居させればいい。
それまでは、継母の力を借りる。
わたしにとっては、全くもって意に沿わない話なのだが、仕方がない。
わたしは、継母に対し媚を売るようになった。
そんなわたしを褒める継母。
多分、心の中ではわたしを見下しているのだろう。
でもお互いの利害が一致したわたしたちは、表面上は仲良くすごすようになっていった。
そんな時。
マイセディナン王太子殿下の婚約者選びが始まった。
わたしは公爵家の次期当主になるのが確定していたし、もともと公爵家令嬢であるのだから、家柄として婚約者候補にふさわしい女性だった。
その話を聞くと、すぐに父のところに行き、公爵家としての婚約者候補にしてくれるようにお願いをした。
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