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第四十四話 馬車に向かうわたしたち

「殿下、お誘いしていただいてありがとうございます。しかし、殿下のお誘いを受ける資格はわたしにはありません」


「それはそういう意味でしょうか? 遠慮であればなさることはなりません。困っている人は助けたいと思っているのです」


「ありがたいお言葉です。でもわたしは殿下のお力を受けるに値するほどの人間ではありません」


「そんなことはおっしゃられないでください。困っている人をこのままにしておくわけにはいかないと思っているのです」


 やさしい殿下。


 殿下だったら、今のわたしが貴族でなくても受け入れてくれる気がしてきた。


 わたしは決断した。


「今のわたしは貴族ではないのです」


「貴族ではない? それはどういう意味なのでしょうか?」


 驚く殿下。


「わたしは公爵家から追放されました。それで、今王都を目指して歩いています。貴族でない人間がこうして殿下と話すこと自体、おそれ多いことなのに、馬車まで乗せていただくのはあまりにおそれ多いことになると思います」


「それで、誘いを受ける資格はないと言われたのですね」


「そうでございます」


 殿下は、わたしがそう言うと、


「誘いを受ける資格がないとおっしゃっていますが、そんなことはありません」


 と殿下は言った。


 そして、


「資格があるないではなりません、あなたが貴族であろうとなかろうと、それは関係のないことです。とにかくあなたは今、困っていらっしゃいます。困っている方を、わたしは救いたいだけなんです」


「殿下……」


「とにかく詳しい話は後にしましょう。このままでは。また雪がたくさん降ってきそうです。雪がたくさん降ってきたら、寒さと積もった雪で歩くのがなおさら苦しくなります。一緒に行きましょう。さあ、こちらに」


 殿下は、恥ずかしそうに手を差し伸べてきた。


 先程は、気のせいだと思っていた。


 しかし、また恥ずかしそうにしてきたので、殿下は、わたしに異性としての意識を少し持っていそうな気がだんだんしてきた。


 いや、これは殿下も自分で言っている通り、


「困っている人を救けたい」


 という思いだけなのかもしれない、


 しかし、殿下が手を差し伸べている以上、その思いには応えたい。


 たとえ、それがわたしを異性として意識するものではなかったとしても。


 殿下は、わたしが貴族ではないのに救けようとしているのだ。


 これほどありがたいことはない。


 わたしは殿下の申し出を受けることにした。


 手を殿下の手に差し出し、


「殿下、申し訳ありません。殿下がよろしければ。お世話になりたいと思います。よろしくお願いします」


 と言って頭を下げた。


 殿下は、わたしの手を恥ずかしそうに握る。


 殿下のやさしさが伝わってきた。


 マイセディナン殿下の手を握ったことはあるけれど、こういうやさしさは伝わってこなかった。


 手を握っただけで、これだけやさしさが流れ込んでくる方は初めてだ。


「それでは行きましょう」


「ありがとうございます」


 そして、殿下に連れられて、馬車に向かって行った。


 わたしの心はだんだん沸き立ち始めていた。


 王都までまだまだ続く旅ではあるが、これからは、殿下と一緒。


 王都に行けば、それでお別れということになるだろうけど、そのわずかの間だけでも思い出を作りたいと思っていた。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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