第四十一話 オディリアンルンド殿下
男性が、自分の名前を言おうとしている。
どんな名前なのだろう
そして、どういう身分の方だろう。
この王国の貴族でも高位の方だろうか?
この王国の人は、もちろん誰もしらないので、この男性がどういう名前で、どういう地位の人かはわからない。
しかし、今までの戦いからすると、よほどの高位な方のような気がする。
この王国の公爵家の令息だろうか?
どういう方であったとしても、素敵な方なので、地位は関係ないのだけど。
とにかくまず名前を聞けるのはうれしい。
この男性と仲良くなる第一歩になっていく。
心がだんだん沸き立ってくる。
そして、
「わたしの名前はオディリアンルンドです。この王国の王太子です」
その男性は柔らかい表情ではあったが、威厳のある声でわたしたちに言った。
オディリアンルンド王太子殿下!
わたしの予想以上の言葉を、男性は言ったのだった。
「王太子だと……」
「王太子が戦いの相手……」
「王太子じゃかなうわけがない……」
十人は、さらに気落ちした。
わたしはとても驚いた。
ここで会ったのが、王太子殿下だったとは……。
高位の貴族ではないかという予想はしていた。
しかし、王太子殿下だということは、想像もできなかった。
しかも、隣の王国の王太子殿下。
ただの殿下ではない。
武勇に優れながらも、常に柔らかい言葉を使い、それでいて威厳がある。
これだけでも胸がドキドキしてくる。
「では剣と鞘を回収してください」
「かしこまりました」
男性二人が、十人のところへ行く。
この人たちも殿下の側近だろう。
この十人の周囲で待機していて、殿下の命令が出るのを持っていたようだ。
多分、殿下がピンチになった時は、助太刀に入ったのだと思う。
もちろんそういう懸念は、全くといっていいほどなかったのだけど。
落ちている剣の回収が始まる。
「鞘も差し出してください」
側近の一人がいうと、
「仕方がない」
と口々に言って、鞘を次々に地面に向けて投げる。
投げるのは、せめてもの抵抗だろう。
しかし、それ以上の気力はないようだ。
剣を向けた相手が、王太子殿下だったということで、更なる打撃を受けている。
側近たちは、剣と鞘をあっと言う間に回収していった。
「それでは皆さん。わたしが先程言った通り、戻って賊を続けるべきかどうか、一度よく考えてください。そして、代表者に、わたしが降伏をすすめていることをお伝えください」
殿下がそう言うと、レチイドは立ち上がり、
「お前にやられたのは悔しい。賊以外の仕事は、俺には考えられない。次会う時は絶対に倒す」
と言った。
そして、ルンリックスも立ち上がり、
「俺だって、賊以外の仕事は想像もできない、レチイドもお前も絶対に倒す」
と言った。
しかし、それは、こちらにかろうじて聞こえてくる、今までで一番弱々しい声でしかない。
「いくぞ、お前たち」
「お前たちもいくぞ」
レチイドとルンリックスは歩き始める。
部下たちも立ち上がり、その後に続く。
十人は、疲れ切った様子で、雪が積もっている山道の方へ歩いて行った。
殿下は、賊たちが戻っていくのを確認した後、こちらに向かう。
そして、
「お嬢さん、大丈夫でしょうか? おケガはありませんか?」
と聞いてきた。
殿下とお話をする時がきた。
夢のような時間がやってきた。
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