第四十話 涼しい表情の男性
「なんてやつだ! 全く隙がない!」
ルンリックスは男性に、剣を打ち続けているが、男性は涼しい表情で受け止めている。
「もうそれでおしまいですか?」
「なんてやつだ。九人の男と戦ってきて、ほとんど疲れていないなんて……」
ルンリックスは次第に疲れてきたようだ。
それに比べて、男性の方は、まだまだ余裕がありそうだ。
「先程の方にも言いましたが、あなたにも降伏してもらうようにお願いしたいところです」
「俺はあいつのようにはならない」
「降伏しませんか?」
「しない。俺はお前を倒して生命を奪い、この女の生命も奪うんだ!」
「まだそんなことを言っているのですね」
「言って何が悪い!」
「そんなことをいつまでも言っていてはいけません。賊をやっていてむなしくならないのですか?」
「むなしくなるはずがない。俺たちは、賊として今まで生きてきた。誇りにさえ思っている。だから、お前たちの生命を奪うんだ!」
男性とルンリックスの斬り合いが続いていく。
「なんて手強い相手なんだ……。俺がこんなに苦戦を強いられるとは……」
「そろそろ決着をつけましょうか?」
「お前が言うことではない! ふざけるな!」
叫びながら斬りかかるルンリックス。
「もう、仕方のない人ですね。これ以上あなたと戦っても無駄ですから、決着をつける必要がありますね」
男性は、ルンリックスの剣を避けると、その腕に痛烈な一撃を与える。
「痛い! なんという速さだ……」
ルンリックスは剣をその場に落とし。力なく座り込む。
「これでもうわたしの勝ちです。抵抗はしないでください」
柔らかい表情だが、厳しい言葉で言う男性。
「やられてしまった。腕が痛くて、剣を使うどころか持つこともできない。情けない。俺はレチイドと全く同じレベルだったということだ……」
弱々しく言うルンリックス。
男性の気力にルンリックスも押されていて、力がなくなっているようだ。
「さて、皆さんにお話をしたいことがあります」
男性は、戦意を失った十人に話しかけた。
十人は渋々話を聞く態勢になる。
「あなたたちの生命をここで奪う気はないです。一度チャンスを上げますから、剣はそのままにし、鞘もここに捨てて、あなたたちの根拠地に戻りなさい。戻って、賊を続けるかどうかよくよく考えてください。そして、あなたたちの代表者にお伝えください。抗争を今すぐ止めて、王国に降伏しなさい、ということを」
柔らかい口調だ。
しかし、異議は絶対に認めないという意志が伝わってくる。
「王国に降伏だと?」
ルンリックスが不思議そうに言う。
そして、
「そういうことがよく言えるものだな」
レチイドもそう言う。
「そうしなければ、王国は、あなたたちを討伐します。今までは討伐できませんでしたが、これからは違います。これ以上、抗争を続けたり、旅行者や付近の住民に迷惑をかけたりするのであれば、必ずあなた方を討伐します。そのことを代表者によくお伝えください」
「生意気なことをよく言う」
「レチイドの言う通り、お前は生意気だ。だいたいお前は何の権限でそういうことを言うのだ。まだ名前さえも名乗っていないというのに」
「そうだ。そう言うからには、名前を名乗ったらどうなんだ」
先程までの威勢のよさはないが、それでも一生懸命強がっている二人。
「それでは名乗りましょうか」
男性は、微笑みながら言う。
周囲に緊張が走る。
「わたしの名前は……」
「面白い」
「続きが気になる。続きを読みたい」
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