第三十八話 男性対賊の混成集団
「生意気なやつがもう一人いた。俺はお前の言うことなど聞くことはできん!」
ルンリックスがそう言うのに対し、
「もう一度言います。わたしは、戦いを好みません。その方の生命をどうしても奪いたいというのなら、戦います」
と男性は応える。
「俺はお前の生命も奪いたくなった!」
とルンリックスは言うと、
「レチイドよ。この女のことは後にして、今はこいつの生命を奪う方が先だ。協力してくれといいたくはないが、してくれるな」
とレチイドに言った。
レチイドはそれに対し、
「俺も協力はしたくはないが、まあ仕方がない。こいつを倒すのが先だ。皆の者、いいか!」
と部下に声をかける。
「あいつらに絶対負けるな!」
ルンリックスも部下に声をかけた。
八人の部下たちが、混成集団となってその男性を襲う。
男性は剣を抜いた。
部下たちは次々に斬りかかっていく。
男性の腕前はわからない。
しかし、一対八では、いくら腕が良くてもかなわないのではないだろうか。
どうしてもそう思ってしまう。
そして、この男性が倒れてしまえば、もうその時はわたしの生命が失われる時。
結局は、ほんのちょっと生きる時間が長くなっただけだった……。
そう思っていると、意外な展開になっていた。
男性は、鮮やかな剣の使い手だった。
剣術の達人なのだろう。
優雅で、しかも凛々しい動きをしていて、惚れ惚れしてくる。
そして、ハンサムな方だ。
このわずかな時間で、わたしは、この男性に好意を持つようになっていった。
部下たちは、何とか男性に打撃を与えようとする。
しかし、剣の速度は男性の方がはるかに上回る。
剣を受け止める男もいたが、それもわずかな間でしかない。
次々に腕を痛打され、剣を手から落とす部下たち。
部下たちは、防具をつけているので、直接皮膚を斬られるわけではないが、腕に対するその打撃は強いものだろうと思う。
痛がっているので、当分、剣は持つことはできないだろう。
八人はその場に座り込んでしまった。
「あなたたちは、そこでおとなしくしていなさい」
男性の凛とした声と気力に押されたのか、部下たちは何を言えず、呆然としていた。
落とした剣を拾うこともできない。
当分の間は、立ち向かう気力はなさそうだ。
「情けないやつらだ。まあいい。俺が手本を見せてやる!」
レチイドはそう言うと、男性の前に出る。
「お前が先か?」
「レチイドよ、お前が先に行きたいのか?」
「さっきはお前に少しやられたからな。俺の強さもここで発揮しておきたいと思うんだ。そうでないと、お前に負けたままだからな」
「そうか。ならお前から行くんだな」
「まあ、俺の強さをその場所でじっくりと味わうがいい」
そう言うとレチイドは剣を男性に向けてきた。
「俺は今までのようなわけにはいかないぜ! お前を絶対に倒してやる!」
「降伏した方がいいのでは?」
「降伏なんて、誰がするか!」
切りかかっていくレチイド。
すごい気迫だ。
それを受け止める男性。
「お前のようなやつは、俺に倒されるべきなのだ!」
レチイドの方が一瞬押しているような気がした。
先程の部下との戦いで少し疲れているはず。
それが影響しているのでは、と思っていた。
しかし、
「なぜあなたは賊をしているのですか? もっと世の中の為になることができるでしょう」
と言って、男性はレチイドを押し返した。
「なんてやつだ!」
「一撃でわたしを倒せなかっただけで、勝負はありました。降伏してください」
「誰がお前の言うことなど聞くんだ! ふざけたことをまた言いやがって! 勝負は俺の勝ちだ!」
再び剣を振り下ろすレチイド。
「面白い」
「続きが気になる。続きを読みたい」
と思っていただきましたら、
下にあります☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に思っていただいた気持ちで、もちろん大丈夫です。
ブックマークもいただけるとうれしいです。
よろしくお願いいたします。