第三十六話 賊と賊の対決
「なんでお前たちはいつも俺たちのじゃまをするんだ! いつも、いつもじゃましやがって!」
とルンリックスが言うと、
「それはこっちが言いたいことだ。お前たちこそ俺たちのじゃまばかりするじゃないか!」
とレチイドも言い返す。
他の男たちも相手側に対し、怒りを沸き立たせている。
「どうやら少し痛い思いをしないとわからないようだな!」
「その言葉、そのままそっくり返してやる!」
そう言うと、二人は剣を抜き、構えた。
「今日こそは決着をつけてやる!」
「今日こそお前を倒してやる!」
レチイドがルンリックスに向けて剣を振り下ろす。
しかし、ルンリックスはその剣をしっかりと受け止める。
「お前は剣の腕が相変わらず上がっていないな!」
ルンリックスはあざ笑いながら言う。
「お前のような人間にいわれたくはない!」
レチイドは何度も何度もルンリックスに斬りかかる。
しかし、ルンリックスの方は余裕があるようだ。
その度に剣を受け止める。
「やりやがる! 初めて闘った頃に比べると、どんどん手強くなっている!」
レチイドは少し疲れてきたようだ。
「ならばこちらから行く!」
今度はルンリックスがレチイドに斬りかかる。
レチイドはそれを受け止めるが、勢いが強く、劣勢となる。
そして、バランスを失い、尻餅をついてしまった。
「鍛えた成果が出てきたということだな。うれしいぜ!」
ルンリックスはレチイドに剣を突きつける。
「まあ、こんなことをしている場合ではないな。どうだ、ここにせっかくの獲物がいるのだから、俺たち二人で分け合わないか?」
急にやわらかい口調になるルンリックス。
「なんだ、お前、気持ち悪いな。どういう風の吹きまわしだ?」
「ほんの気まぐれだ。今日はお前と組みたくなった。それだけだ」
他の男たちも、ルンリックスの態度の急変ぶりに驚いている。
「まあ、お前が組みたいというのなら協力してやってもいい」
「相変わらず強がりだけは一人前だな」
ルンリックスは苦笑いしながら、剣を手元に戻した。
レチイドは立ち上がると、
「この女はお金を差し出さないと言っている。それで、俺はこいつの生命を奪おうとしたのだ」
と言った。
「お金を差し出さないと言っているんだな?」
「そうだ」
「じゃあ、念の為、俺からも聞くことにしよう。生命を奪うのは最後の手段だからな」
ルンリックスはそう言うと、剣をわたしの方に向けた。
「お嬢さん、お金を俺たちに差し出せ! そうすれば、生命は助けてやる」
再び訪れた生命の危機。
しかし、生命を奪われたとしても。お金を差し出すことはできない。
わたしは追放されたとはいっても、貴族の出身であることには変わりはない。
その貴族の誇りをもって、賊たちに対応していかなくてはいけない。
そういう気持ちが賊と対峙している内に、どんどん強くなっていた。
「お金を差し出すことはできません」
わたしはそう言って、ルンリックスの要求をきっぱりと断った。
「お前は何を言っているのだ! 俺はお金さえ出せば助けてやると言っているんだぞ!」
「何と言われても出す気はありません」
「どうしても出さないと言うのか?」
「絶対に出しません」
「俺の要求を断るとはな。だんだん腹が立ってきた」
ルンリックスの表情が険しくなってくる。
「それじゃ、俺はお前の生命を奪うことにする。これは、お前が俺の言うことを聞かないからだ」
ルンリックスはそう言うと、剣を一旦手元に戻す。
「俺のやさしい心がわからないとは。寂しいやつだ。そして、腹の立つやつだ。でももう一度だけチャンスをやる。生命を失いたくなければ、俺の要求通りにしろ!」
ルンリックスが剣を構えた。
気合が入っている。
賊の要求に従えば、助かるかもしれないが、それはできない。
先程のレチイドの時は、斬られる寸前で助かったが、もう今度は無理だと思う。
わたしが断った瞬間に、その剣がわたしを切り裂くだろう。
残念だが、もう仕方がない。
ルンリックスはいつでも剣を振り下ろせるように準備をしていた。
「面白い」
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