第三十五話 剣を突きつけられるわたし
「ただで通すわけにはいかない」
と、賊は言っているが、「それなりのもの」を出せば通してくれる雰囲気だ。
結局お金がほしいということなのだろう。
最初、賊に対して、すぐにでもわたしの生命を奪いそうな印象を持ったが、そこまでの人たちではなさそうだ。
しかし、賊に差し出すようなお金はない。
絶対に差し出してはいけない。
差し出さなければどうなるだろう?
最初想像した通り、生命を奪いにくるかもしれない。
でもその時はその時だ。
この人たちに気持ちでは負けないようにしようと思った。
「どうだ。聞いただろう。ここを通るからには、それなりのものを出してもらう必要がある」
お金を出せと言うのだとは思うが、一応聞くことにした。
「何を出せばいいのでしょうか?」
「お前の持っているお金だ。持っている分を全部差し出せ。そうすれば、ここを通してやる」
ついにその言葉が出てきた。
それに対し、言うべきことは一つしかない。
「嫌です」
きっぱりと断るわたし。
なんだか少し爽やかな気持ちになってくる。
「ほお、そんなことを言うのか。生意気なやつめ」
リーダーは、剣をわたしの顔に突きつける。
「お前、生命は惜しくないのか? 俺が一突きしたらもうお前の生命はないんだぞ、生命を大切にしなきゃいけないよ。わたしはお前がお金を出せば、生命を助けてやると言っているんだ。なぜわたしの厚意を無視するんだ」
笑いながら言ってくるリーダー。
この人は、人の生命をなんだと思っているのだろう。
自分のものだと思っているのだろうか?
そして、厚意を持っている人間は、剣を向けて、人の生命を奪おうとはしないはずだ。
「あなたが何と言おうと、お金は出しません!」
この人に従ってはいけない。
すると、笑っていたリーダーが怒り始めた。
「ここまで俺を侮辱するとは。お前がそういう気持ちなら、喜んでお前の生命を奪ってやることにしよう」
リーダーはそう言うと、一旦、剣を自分の手元に戻す。
そして、剣がわたしに振り下ろされてくる。
あまりの急展開ぶりに、わたしは一瞬何も思うことができなくなっていた。
自分の生命が失われる、という意識も働かなかった。
そこへ、
「おい、お前、なに俺の獲物を横取りしようとしているんだ」
という大きな声が聞こえてきた。
賊のリーダーは、その声を聞いて、剣を自分の手元に戻した。
「俺のじゃまをするのは誰だ!」
リーダーは、その声の方を向いて、大声で叫ぶ。
「レチイドよ。俺だ。ルンリックスだ!」
「ルンリックスだと!」
ルンリックスと言われた男は、他に四人の男たちを連れて、こちらにやってくる。
新しくここに来た五人の中のリーダーのようだ。
また、今までの五人の中のリーダーはレチイドという男だということをこの時理解した。
「せっかくこの女の生命を奪おうとしていたのに! 何をしにきた!」
レチイドをリーダーとする五人と、ルンリックスをリーダーとする五人が対峙をする。
「俺たちはこの女をお前たちより先に狙っていたんだ。それをお前たちは、いきなりやってきて俺達の獲物を奪おうとしている。言語道断のふるまいだ。俺たちに譲れ!」
とルンリックスが言う。
すると、
「何を無茶苦茶なことを言っている。先にこの女にお金を出せと言ったのは俺たちだ。俺たちに優先権がある!」
と言ってレチイドは反発する。
「ふざけたことを言うんじゃない!」
「どちらがふざけたことを言っていると思っているんだ!」
どちらも譲る様子はない。
「面白い」
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