第三十四話 賊との対決・生命の危機
後もう少しで平坦な道に出ると思っていた時。
「おい、そこの女。少し俺たちに付き合え!」
という大きな声が聞こえてきた。
周囲にはわたししかいない。
ということは、わたしに呼びかけたのだろうか?
そして、
「俺たちに付き合え!」
と言っているが、どう言う意味だろうか?
こんなところで、その声の人はわたしをお茶に誘うのであろうか?
もし誘われても、そういう気にはもちろんなれないので断るしかないが、その可能性はないと言っていい。
想像できることはただ一つ。
噂になっていた賊だ。
わたしは王都に行かなくてはいけない。
王都に行って、職につかなくてはいけない。
こんなところで賊の相手をしている余裕はない。
わたしは、聞こえなかったふりをして、歩き続けようとしたが、
「おい、聞こえないのか? 俺たちは賊なんだぞ! 無視するとはずいぶんと生意気なやつだな!」
と相手が言ってきたので、立ち止まらざるをえなかった。
あれほど出会いたくなかった人たちにここで出会ってしまうとは……。
一瞬、山越えのルートを選択すべきだという思いが心に浮かんだ。
賊に出会う可能性は少ないと思ったから、こちらの道を選択したのに……。
でもそんなことは言っていられない。
賊だということは、これから予想される危害からこの身を守らなければならない。
しかし、雪が積もっているし、凍っているところも多いので、走るのは危険だ。
転倒してしまい、けがをしてしまう可能性は強いと思う。
もし今日のようなコンディションではなく、走れたとしても、わたしの足は遅いので、すぐに追いつかれてしまうだろう。
とにかく相手の話を聞くしかない。
話を聞いた後、説得して、無事ここを脱出できる可能性はなくはない。
そう思っていると、四人の男がわたしの周囲を取り囲んだ。
屈強な男たちで、腕が立っていそうだ。
今にもわたしに危害を加えそうな雰囲気。
その力で立ち向かわれたら、一撃で倒されてしまうだろう
さすがにわたしも怖いという気持ちが芽生えてくる。
「おい、女。お前は一人なのか?」
最初にわたしに声をかけたリーダーらしき男が、わたしに言ってくる。
「そうですけど」
なんとか心を平静にしようとする。
「たいした女だな。それは褒めてやる」
「それはありがとうございます。褒めていただけるなら、ここを通してもらえるとありがたいのですが」
「ほお、通してほしいのか?」
「お願いします」
「通さないこともないがな。どうだ、みんな、この女は通してほしいと言っているが、どう思う? 俺は、ただで通すわけにはいかないと思う」
リーダーらしき男が、笑いながら他の三人に言う。
「リーダーのおっしゃる通り、ただで通すわけにはいかないですよ」
「やはり、通すからには、それなりのものをこちらに出してもらわないと」
「ここを通るからには、我々に貢いでもらうのが礼儀というものですよ」
三人は口々に言う。
「お前たちもわたしに賛成してくれた」
リーダーは、大笑いをする。
このやり取りを聞いている内に、賊たちの言っていることを理解するようになって、だんだんわたしは冷静になってきた。
「面白い」
「続きが気になる。続きを読みたい」
と思っていただきましたら、
下にあります☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に思っていただいた気持ちで、もちろん大丈夫です。
ブックマークもいただけるとうれしいです。
よろしくお願いいたします。