表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/137

第三十三話 九日目

主人の話は続く。


「とはいっても、無事に通っている人も多い。襲われている人は決して多くはない。だから今でもメインルートのままだ。でも襲われないという保証はない。山越えの道は、険しい山を越えなければならなくてつらいとは思うが、越えられないことはない。安全という面では山越えをすすめたいと思っている」


主人のアドバイスはありがたい。


わたしもしばし予定を変更すべきかどうかで悩んだ。


しかし、わたしの体力では、山越えは無理そうだった。


そこで倒れる可能性が強いと思うと、川沿いの道の方がよさそうだった。


賊の問題はあるが、無事に通っている人も多いという話だ。


わたしも無事に通れる方の人になることを期待するしかない。


「心配していただいてありがとうございます。でも体力に自信がないので、川沿いの道を行きたいと思います」


「お嬢さんなら険しい道も乗り越えられると思う。可能性が低いとはいえ、危険があるところは通ってほしくはないと思っている」


「今までの旅からすると、乗り越えるのは難しそうです。無事に通れることを信じてと思います」


宿屋で毎日夜、休んでいるとはいうものの、疲れはなかなか取れない。


とにかく足が痛い。


少しでも楽な道の方がいい。


「そこまで言うのなら仕方がないか……。行くからには、無事に王都にたどりつけることを願っている」


主人は穏やかにそう言った。


わたしはこうして、川沿いの道を進むことになった。


それから七日目、八日目と川沿いの道を進んだ。


風景を楽しむという意味では、なかなか素晴らしいものがある。


雪に覆われた山々、地表。


そこをかきわけるように流れて行くきれいな川。


時々激しくなり、周囲を白く染めていく雪。


眺めるだけなら、その美しさを長い時間味わうことができると思う。


しかし、現実は違う。


時々吹き付ける本降りの雪は、体を芯まで冷たくしていく。


今までもそうだったが、雪が深く積もっていると、足も思うように動かない。


とにかく次の宿屋を目指して、歩くのみだった。


他のことを思う余裕は全くなかった。


自分が婚約破棄されたことも、家から追放されたことも、思い返す余裕はないくらいだった。


ただ、それでも山越えの道を行くよりはましだと思った。


もし山越えの道を進んでいたら、この程度ではすまなかっただろうと思う。


今のところ、賊も襲ってくる様子はない。


この雪では、襲うこと自体難しいと思う。


このまま無事で行けるのではないか、ということを、雪に苦しみながら思っていた。


そして、今日九日目。


わたしは宿屋を出発した。


他にも宿屋に泊まっていた人たちはいたが、既に馬車で出発している。


この川沿いの道に入って以来、徒歩で進んでいる人はわたし一人しかいない。


寂しい気持ちも少しするし、馬車で行けたら楽でいいとは思うが、それは仕方がないことだと思っていた。


雪は止んでいた。


少し歩きやすくなったと思う。


このままいけば、今日の午後には、この川沿いの道を抜けることができそうだった。


そうすれば、後は平坦な道が多くなってくる。


もちろん平坦な道が多くなると言っても、王都まではまだ多少の丘はあるが、そこまでくればもう乗り切れるだろう。


後少しでこの歩く苦しみから脱出できそうだ!


そう思うと、わたしは少し気力が上がり始めてきていた。


しかし、それと同時に、王都に入ってからのことを心配し始めていた。


入ったらとにかく職を探さなければならない。


所持金がそれほどあるわけではないので、できれば一週間以内に決めたいところだ。


そう思ってわたしは歩いていた。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


と思っていただきましたら、


下にあります☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に思っていただいた気持ちで、もちろん大丈夫です。


ブックマークもいただけるとうれしいです。


よろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ