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第三十話 お父様

 わたしは、丘の上にたどり着いた。


 雪に覆われた公爵領の中心部はとてもきれいだ。


 しばしその美しさにうっとりする。


 ここを去る時になって、初めてその美しさを知ることができた。


 遅すぎたと思う。


 公爵領自体は、領地経営の為、足を運んでいたが、仕事として行っていたので、こういう美しさを味わう余裕はなかった。


 わたしが生まれてきてからずっと過ごしてきた屋敷も、雪に覆われている。


 もうここに戻ってくることはないかもしれない。


 できればもう一度戻ってきたいけど、ほとんど無理だろうと思う。


 そう思うと、涙が出てくる。


 それでも希望だけは持ち続けたいと思っていた。


 ああ、お父様……。


 屋敷を出る時は、まずこの丘にたどり着かなければ、という思いが強くて、先を急いでいた為、お父様のことを思い出す余裕はなかったが、こうしてたどり着いてみて、屋敷の方を眺めると、お父様への思いがあふれ出てくる。


 忙しかったお父様。


 家族の為に割ける時間はあまりなかった。


 その中でも、継母と異母姉にも平等に愛を注ごうと努力されていたお父様。


 わたしにも、もちろん愛を向けてくれていた。


 決して誰かに一辺倒になることがなかったその対応は、よかったと思う。


 しかし、二人はそれで満足していなかった。


 わたしはそうは思わなかったのだが、お父様はわたしのことを一番愛していると思っていて、その嫉妬心がわたしにつらくあたる要因になっていたように思う。


 特にわたしがお父様に、領内経営のアドバイスをするようになってからその傾向は強くなった。


 嫌味を言うことがますます多くなった。


「あなたのような魅力のない人が、なんでかわいがられるのかしら」


 と継母が言えば、


「お父様を独り占めにするなんて、いいご身分ね。どうしてこんな魅力のない子をかわいがるのかしら」


 と異母姉が言う。


 お父様は、内政の才能があると思ったので、わたしにその幼い頃から教育をしていた。


 そして、わたしはお父様に要請され、アドバイスをしていた。


 この公爵家の経営を少しでもよくする為に。


 お父様は決して、わたしだけをかわいがっているから抜擢をしたわけではない。


 なんでそういうことが理解できないんだろうと思う。


 でももうそれは言ってもしょうがない。


 わたしはもう公爵家の人間ではないのだ。


 これからは、普通の平民として生きていく。


 もうこの丘を出発しなければならない。


 しかし、もうしばらくの間ここにいたい。


 そう思ったわたしは、しばしの間、お父様のことを思い出していた。


 楽しかった思い出もある。


 わたしに対し、愛を注いでくれたという思いでもある。


 しかし、思い出していくと、どうしてもお父様に謝らなければならないことがあった。


「お父様が三人仲良く、とおっしゃっていたのに、結局うまくいきませんでした。わたしは努力をしていましたが、わたしの努力が足りなかったのだと思います。お父様、継母や異母姉と仲良くできなくて申し訳ありませんでした」


 この世ではもうかなわぬことだが、この思いが、あの世にいると思っているお父様に伝わってほしいと思った。


「面白い」


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