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第二十九話 歩き始めるわたし

 わたしは隣のリランギュール王国の王都を目指して歩き始めていた。


 ここから十日ほどの距離。


 今まで長い距離を歩いた経験が全くないわたしからすると、途方もない距離のところにある。


 それなのに、まだたいして歩いてもいないのに、足が痛くなってきている。


 冷たい風が吹きつけてきて、寒い。


 歩き始めた時は、寒さをしのげそうな気がしていたが、甘いものではなかった。


 雪が降っていないだけまだましだが、このままでは雪も降ってきそうだ。


 もう既に、このまま歩いていけるのかという弱気な気持ちがわたしの心を支配し始めていた。


 それでも歩かなくてはいけない。


 この公爵領にはいられない。


 いや、この公爵領で平民として暮らすことができないわけではない。


 それは、継母や異母姉も禁じてはいなかった。


 しかし、その場合、いつも屋敷を悲しい思いで眺めなければばらなくなるし、二人からの嫌がらせもあるだろう。


 それには耐えられない。


 そして、公爵領を出ても、ブリュノレンス王国内にもいるのはつらい。


 殿下は、わたしを公爵家から追放することは命じたが、この王国から追放するとは言っていない。


 公爵家にいなければ、この王国のどこかに行くことは禁じられていない。


 というより、もう殿下はわたしに対する関心はないので、公爵家を追放されれば、後はどうでもいいようだ。


 気が変わって、この王国にもいてはいけないというかもしれないが、さすがにそこまで冷たい方ではないと信じたい。


 そこで、王国の他の地域に行くことも検討したが、それは断念した。


 王国にいれば、殿下のことを思い出すことが多くなる。


 それはつらいことだ。


 殿下のことはなるべく忘れたい。


 それにはこの王国を出るのが一番いい。


 隣の王国の王都に行き、そこで職につく。


 どういう職につけるだろうか?


 それはわからないが、とにかく職につき、自立をしていく。


 それが、わたしのするべきことだった。


 なんとかわたしは気力を立て直して歩く。


 わたしは隣の王国の王都には行ったことはないが、王都へ歩いていく場合、道中どういうポイントがあるのかということや、そのポイントとなる場所に到達するのに、どれだけ時間が必要かということを調べたことがあった。


 これを調べておけば、実際歩いた時に、自分の予定が順調に進んでいるかどうかを把握することができる。


 調べた時は、まだ婚約前で、継母や異母姉にこの家を追放されることがあった時に備える意味があった。


 当時からこの家を追放された場合、隣の王国へ行くことは、選択肢の一つとして存在していた。


 いや、それは可能性があるかもしれないという意味で備えたのであって、本当にそういう日が来るとは夢にも思っていなかった。


 調べておいてよかったと思うが、複雑な気持ちだ。


 それによると、昼までには、丘の上にたどり着く必要があった。


 そうしなければ、今日の宿屋への到着は夜も結構入った頃になってしまう。


 この王国の全体的な治安はいい方だが、それでも夜の女性の一人歩きは危険だ。


 歩いている内に雪が降ってきた。


 丘を登り始めた時には本降りになっていた。


 風もますます強くなり、雪と一緒になって吹き付けてきた。


 雪があっという間に積もってきていて、歩きにくくなってきている。


 足が痛くなっているのに、更なるダメージを与えられていた。


 まだ領内も出ていない。


 でももう心が折れてきていた。


 馬車が時々そばを通る。


 乗せてほしいと思ったりもするが、定期便の馬車は高いし、商人の馬車は貴族でもない人間を乗せるわけがない。


 心が折れようが、歩くしかなかった。


 わたしは苦しみながらも、なんとか歩き続けた。


 そして、予定より遅れ気味ではあったが、丘の上に到着した。


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