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第二十五話 三人で仲良くしてほしい

「わたしがこの世を去ったら、二人とお前の対立は深まるかもしれない。先程二人には、それぞれ、『三人で仲良くしてほしい。三人でこの公爵家を盛り立ててほしい』と頼んだ。うなずいてくれたので、対立が深まるということは信じたくはないが……」


「わたしは、お母様ともお姉様とも仲良くしていきたい、といつも思っています。お二人がそうおっしゃっているのであれば、わたしも信じたいところです」


 今までの冷たい仕打ちからすると、お父様に言われたからと言って、心が変わるというのは難しい話だと思う。


 でも信じるしかないだろう。


「さっきも言ったが、わたしは三人を愛しているのだ。その三人が仲違いをするのが一番つらい。イゾルレーヌとルアンチーヌは仲がいいからその点の心配は少ないが、二人とお前の仲のことはどうしても心配になる。だからこそ、二人には特に、『リンデフィーヌとは仲良くしてほしい。リンデフィーヌが殿下と結婚した後も大切に思ってほしい』と頼んだのだ。ただそうは言っても、わたしがこの世を去れば、それが難しくなり、仲が悪くなることは充分想像できることだと思う。お前たちの仲が悪くて、殿下と結婚した後、この公爵家に里帰りもできなくなるようでは、お前もつらいと思う」


「それは避けたいと思っています」


「できればもう少しだけ長く生きて、お前たちをそばで見守ってあげたかった。わたしが生きている間に、三人を仲良くさせたかった。でももうそれもかなわぬことだ。三人には申し訳ないと思っている。特にお前には申し訳ない気持ちで一杯だ。一番つらい思いをしているのはお前だと思う。今まで、家の中で苦労していたのは理解しているし、これから殿下のところへ行けば、また苦労が待っていると思う」


 お父様は一回言葉を切った。


 かなり疲れてきている。


「お話を続けて大丈夫でしょうか?」


「大丈夫だ。いや、ここで疲れたとは言っていられない。もうわたしに残された時間はほとんどない」


 そう言った後、お父様は話を続ける。


「お前に苦労させるのはつらい。しかし、お前ならその苦労を充分乗り越えられると思っている。そして、二人や殿下と仲良くしていけると信じている」


「もったいないお言葉です」


「三人仲良く、そして、殿下と仲良く。それがわたしの最後のお願いだ」


「お父様、三人仲良く、そして殿下と仲良くしていけるように努力していきます」


 仲良くできる自信はなかった。


 わたしはそうしたいと思っている。


 しかし、二人はずっとわたしのことを憎んでいるし、殿下もわたしと仲良くする気はないようだ。

 仲良くできる日が来るとは思えなかった。


 でもお父様の思いには応えたい。


「わたしも無理なことをお願いしているのはわかっている。それでも夫として、父親として言わなければならないのだ。申し訳ない」


「お父様、心配しないでください。きっと仲良くやって行けると思います」


「ありがとう。リンデフィーヌよ。わたしはお前の幸せを誰よりも願っている。もうこの世での生命は終わりだが、あの世に行ってもお前の幸せを願いたいと思っている」


「ありがたいお言葉です」


「リンデフィーヌよ、幸せになってくれ」


 それが、お父様のこの世での最後の言葉だった。


 この後、お父様の意識は失われて行った。


 数日後、お父様はこの世を去り、わたしは大きな悲しみに包まれて行った。


「面白い」


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