第十九話 マイセディナン殿下の婚約者
わたしは、お父様の言ったことに、とても驚いた。
そして、信じられなかった。
それまでわたしが有利だという情報は全くなかったというのに……。
夢を見ているようだった。
「お父様、それは本当のことでございますか?」
わたしは思わず聞き返していた。
「もちろん本当のことだ。お前には、決まるか決まらないかという余計なことで悩ませてしまって申し訳なかった」
「いいえ、お父様こそ、わたしのことでいろいろ苦労をかけてしまって申し訳ありません。でもよくわたしを婚約者に選定したと思います」
「わたしも自信がなかった。ライバルが多くて、本音を言うと難しいと思っていたんだ。ただ王太子殿下は、誰がいいとも決められなかったので、国王陛下に決定権をゆだねたそうだ。国王陛下は、もともとお前のことをご存じで、この子なら伴侶としてふさわしいと思っていたという話しだ。名誉なことだと思う。それで、決定権をゆだねられた国王陛下は。お前を選定したということだ」
「国王陛下が……」
「王太子殿下は、ちょっと躊躇するところはあったそうだ。でも国王陛下は、『絶対お前にとって大切な人になるから、婚約しなさい』と言ってくれた。それで、殿下も承知して、お前を婚約者と迎えることになった」
「躊躇したところは気になりますね」
「わたしもそこは気になった」
「婚約は成立したとしても、心変わりする可能性はありますよね」
もともと女性関係では、いい噂のない方だ。
「それはあるかもしれない。でもとにかく婚約は成立したんだ、それに何よりも国王陛下という理解者がいる、後はお前が、殿下と仲良くなる努力をしていくしかないと思う」
「わたしにできるでしょうか? お父様の前でいうのはちょっと難しい話ですが、殿下はいろいろな女性と付き合っては別れてきたという噂がある方なので……」
「わたしもその噂は聞いてはいる。そういう方に嫁がせて大丈夫だろうか? と思わなくはない。わたしもそこは心配している。でもお前なら、そういう殿下の心を癒していけるのではないかと思っている。そして、決して状態のいいとは言えないこの王国を一緒に立て直していけると思っている。これは、わたしがお前に期待をしすぎているのかもしれない。そう思うこともある。でもお前なら、その期待に応えてくれると信じている」
いつしか笑顔だったお父様が涙ぐんでいた。
「お父様……」
「これは、わたしのわがままなのかもしれない。でもわたしは、お前が一番殿下の婚約者としてふさわしい人だと思っているし、王妃として支えていけると信じているんだ」
お父様はそこまでわたしのことを買っていてくださっている。
この期待には応えたい。
わたしは、
「お父様のご期待に沿えるかどうかはわかりません。でも殿下との心の距離を縮めていけるようにしたいと思います。そして、殿下の婚約者として、王妃として、ふさわしい女性になるように努力していきたいと思います」
と言った。
前途は多難だ。
婚約したからといっても、また新しい女性と付き合う可能性はないとは言えない。
その時は、わたしとの婚約を破棄し、その女性と婚約する可能性があると思う。
しかし、殿下の婚約者になった以上は、もう前に進んでいくしかない。
素敵な王妃になるということが、わたしのこれからの目標になっていく。
わたしはそう決意をするのだった。
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