第十八話 婚約者決定
こうしてわたしは、殿下の婚約者候補になった。
とはいうものの、わたしとしては、他にも婚約者候補がいるので、自分が選ばれることはないだろうと思っていた。
王室主催の舞踏会にも出席したが、わたしよりもゴージャスな婚約者候補たちがいて、到底この人たちにはかなわないと思っていた。
殿下とも少し踊る機会があった。
わたしは、それまで異性の手を握ったことがほとんどなかったので、緊張した。
恥ずかしい気持ちで一杯だった。
でも踊るからにはしっかり踊らなくてはいけない。
失礼がないように、と思っていた。
ダンスは一生懸命練習していたので、なんとか無事にこなすことはできた。
しかし、特別、殿下の心が動いたようには思えなかった。
素っ気ない対応で、踊った後も、声をかけられることもなかった。
他の婚約者候補の方に、心を動かしているような気がした。
もともと殿下との婚約には、気がすすんでいたわけではなかったので、それで気分が沈むことはなかったが、少し残念な気持ちになった。
それから一か月ほど経った頃の、ある日。
この日、我が公爵家に王室からの使者が来ていた。
使者が来ることは珍しいことではなかった。
しかし、わたしは殿下の婚約者候補になっていたので、殿下の婚約者選定の進み具合も報告に来るのではないかと思っていた。
わたしは依然として、それほど殿下との婚約に乗り気ではなく、他の候補者が殿下の婚約者になっても、別に構わないとは思っていたのだが、そうは言っても婚約者候補になっている以上、全く気にならないわけではない。
お父様が殿下の使者とどういう話をしているのか、ということも、気にしないようにはしていたが、全く気にならないというわけにはいかなかった。
お父様は、そのことについては、一番信頼をしている側近以外に話すことはなく、わたしにも話すことはなかった。
今日も、お父様は話をしてはいただけないだろうな……。
そう思っていたのだけど。
夕方、わたしはお父様に、執務室に来るように言われた。
大切な話があると言う。
わたしは、殿下との婚約の話だろうと思った。
ここ一か月の中で、大切な話と言ったら、それしか思い浮かばない。
婚約者が他の女性に決まったのか?
それともわたしが婚約者に決まったのか?
いや、わたしがなる可能性はほとんどないだろうと思っていた。
舞踏会でも、ほとんど相手にされなかったわたし。
有力な候補者は何人もいる。
婚約者はその中から選定されるだろうと思っていた。
お父様は、他の女性との婚約が決まったことをわたしに言い、慰めてくれるつもりではないか、と思っていた。
もちろん婚約者になれなかったら、それは残念だと思う。
しかし、それほどの思い入れはない。
むしろ、大いに期待していたお父様の落胆の方が大きいと思う。
わたしの方こそ、お父様を慰めて、元気づけてあげなければ。
そう思って、執務室に入ったのだけど……。
「リンデフィーヌ、喜んでほしい。殿下の婚約者が、お前に決まったということで、その正式な使者が王室の方から、先程わたしのところに参られた。これほどうれしいことはない。とてもありがたいことだ」
そこには満面の笑顔があった。
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