第百三十六話 結婚式
殿下とわたしの結婚式が始まった。
わたしたちは出席者のところへ向かう。
国王陛下、王妃殿下、王室の方々、貴族たち、国民の代表、執事、そして侍女。
出席者全員、わたしたちを祝福してくれていた。
それはとてもうれしいことだった。
涙がこぼれてくる。
婚約を破棄され、公爵家を追放されてしまったわたし。
それを理由として、王室と貴族たちの中では、かつての国王陛下や王妃殿下のように殿下とわたしの結婚に反対する人たちは決して少なくはなかった。
多数を占めていたわけではないが、それでも、
「殿下にはもっとふさわしい方がいる。もっと熟考して婚約者を選ぶべきだ」
という意見をもっている人は、一定数存在していた。
そういう人たちに対して殿下は、
「リンデフィーヌさんは、高貴で、しかもやさしい。この王国の為に、わたしに対して的確な助言をしていただいています。これほど婚約者、そしてお妃になるのにふさわしい女性はいません」
と言って、多忙な中でも、根気よく説得を続けた。
また、
「わたしこそ殿下のお妃になるべきなのに……」
と言って、殿下の婚約者になることをあきらめない女性も、一定数存在した。
その中には、殿下に直接想いを伝えてくる人もいたようだ。
しかし、殿下はその申し出を、相手の心を傷つけないようにして、すべて丁重に断っていた。
わたしはその話を殿下から聞いた時、改めて殿下のことを尊敬し、好きになった。
殿下はどんな方にも心配りをしている。
そして、わたしだけを愛してくださる。
これほど素敵なことはない。
わたしも殿下の想いに応えていこうと思った。
王室や貴族、そして、国民全体に祝福されるようになりたいと思った。
祝福される為に、殿下にふさわしい女性になろうと、一生懸命努力を続けていった。
やがて、わたしたちの結婚に反対していた人々も賛成するようになってきた。
殿下との結婚をあきらめていなかった女性たちも、結婚することを受け入れるようになってきた。
殿下は、
「あなたはもともと素敵な方なのに、より一層努力をなさっている。そういうところが、みなさんにも評価されるようになったのです」
と言ってくれた。
ありがたい言葉だ。
しかし、多忙だというのに殿下がわたしの為、一生懸命行動してくれたからこそ、こうした人たちの心を動かすことができたのだと思う。
その結果が今日の祝福に結びついている。
出席者全員が、わたしたちの結婚を喜んでくれるまでになっていた。
わたしは、それがうれしくてうれしくてたまらない。
殿下も、とてもうれしそうだった。
結婚式は、順調に行われていく。
指輪の交換。
誓いの言葉。
そして、誓いのキス。
こうしてわたしたちの結婚は、祝福を受けて正式に成立した。
殿下とわたしは、幸せでいっぱいになる。
そしてその後、結婚式の一環として王都内でパレードを行った。
きれいな青空と新緑。
馬車の進む道の周囲にはたくさんの人々。
人数そのものも多いのだが、熱気がすごい。
殿下とわたしは、微笑みながら手を振る。
熱狂的な祝福を私達は受けた。
それだけわたしたちがいい政治をしてくれることを願っているし、期待をしてくれているのだろうと思う。
この祝福に応えていかなくてはいけない。
「リンデフィーヌさん、わたしは幸せです。ありがとうございます」
「こちらこそありがとうございます。わたしも幸せでございます」
微笑み合うわたしたち。
殿下と一緒に、この王国の人たち全員を幸せにしていく。
わたしはそう強く思うのだった。
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