第百三十五話 殿下にふさわしい女性
殿下とわたしの結婚式が始まろうとしている。
国王陛下、王妃殿下、そして王室の方々。
プロジェクトチームの方々と殿下の側近たち。
執事と侍女。
貴族たちと、国民の代表。
たくさんの人々が出席していた。
今、わたしたちは準備をする部屋で席に座り、待機をしている。
これからわたしたちは、その人々のところへ向かおうとしていた。
礼服に身を包み、わたしの隣で微笑む殿下。
もともと素敵な容姿の殿下だが、今日は今までにないぐらい輝いている。
その姿を眺めているだけでもうっとりしてしまう。
純白のウエディングドレスに身を包むわたし。
長年の夢だった。
ウエディングドレスを着て、結婚式をする。
今世でも幼い頃から強くあこがれていたのだが、そのあこがれは前世も強かった。
なんといっても、前世でわたしは、前世の殿下と婚約まではしたのだけど、結婚式を挙げることはできなかった。
結婚式の前に、病気であの世に旅立ってしまっていたのだ。
前世でこの世を去る前、わたしはほとんどの時間、病床にいた。
その病床で、わたしは、殿下と結婚式を挙げたいと最初は強く思っていた。
前世の殿下とは幼馴染で、幼い頃から殿下と結婚したいと思っていたわたし。
殿下と結婚式を挙げて、幸せな結婚生活をおくるのが夢だった。
しかし、結婚生活は無理なので、結婚式だけでも挙げたい。
その幸せを胸に、あの世に行きたいと思っていた。
後もう少しで結婚式が挙げられる。
もう少し、後もう少し……。
しかし、体の状態はどんどん悪化し、次第に意識を無くすことが多くなっていく。
この状態では結婚式は無理だろうと思い始めていた。
あきらめきれなかったが、体がもう言うことをきかない。
わたしは次第に、来世で殿下と結婚式を挙げ、結婚生活をおくっていきたいと強く願うようになっていた。
殿下もわたしと同じ気持ちだったようで、涙を流しながら来世での結婚を約束してくれた。
今世では幼馴染どうしでは生まれてくることができず、婚約を破棄され、公爵家を追放される、といった苦しみを経験したわたし。
でも、殿下はわたしを救ってくれて、こうして、結婚式を挙げることができる。
殿下には感謝してもしきれるということはない。
その殿下にわたしはふさわしい存在なのだろうか?
隣にいう殿下に比べると、努力しなければならないところは多い。
しかし、わたしが一生懸命努力しても、殿下はさらにその先を行ってしまう気がする。
それでも努力は続けなければならないのだけど……。
そう思っていると、殿下は、
「あなたはいつも素敵で美しくて魅力のあるお方です。今日のウエディングドレス姿は一段とその魅力を上げています。こうしてあなたとご一緒に並んでいるのは夢のようです。この日をわたしは、前世から待ち望んでいました」
と恥ずかしそうに言った。
わたしも恥ずかしがりながら、
「そうおっしゃってくださるとありがたいです。わたしは殿下のおっしゃるほどのものではまだまだないと思っていますが、とにかく殿下にふさわしい女性になれるよう努力をしていきます。そして、わたしも前世から、結婚式の日を待ち望んでいました。それがこうしてかないました。これも殿下がいつもわたしのことを想っていただいているからだと思います。ありがとうございます」
と言った。
「こちらこそありがとうございます」
殿下はそう言った後、
「わたしはあなたが大好きです」
と言って、私を抱きしめる。
流れ込んでくる殿下のやさしさ。
「わたしも殿下が大好きです」
「リンデフィーヌさん……」
「殿下……」
殿下の唇とわたしの唇。
二つの唇は、近づいていった後、重なり合っていった。
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