第百三十三話 結婚式へ
殿下とわたしの結婚式は今日行われる。
五月下旬。
少し暑さはあるが、わたしたちの前途を祝福してくれるような爽やかな天気だ。
心も爽快になってくる。
式の前、わたしは、殿下と婚約して以降のことを思い出していた。
殿下が言っていた通り、国王陛下からの権限移譲が大規模に行われた。
これにより、殿下の仕事量は格段に多くなっていく。
わたしも殿下の仕事を手伝うようになっていて、少しでも殿下の負担が少なくなるように努めていたが、とにかく仕事量が多く、殿下の体が心配だった。
しかし、殿下は疲れた様子を全く見せることはない。
殿下は、権限の委譲で忙しいのにも関わらず、この王国が抱えている様々な問題を改善しようという熱意に燃えていた。
その為に有能な人材を抜擢し、プロジェクトチームを作って、改善の為の対策の検討を始めることになった。
わたしは、殿下に助言をすることによって、そのプロジェクトチームの活動の支援をする。
この王国が抱えている問題の中でも、特に財政赤字の問題は、今にでも対策案を立てなければならない状態にあった。
それほど待ったなしの状態だった。
今までは増税によってそれを補おうとしていたし、大臣たちは、
「さらなる増税を!」
と申し出ていた。
しかし、国王陛下も殿下も、その要請は認めようとしない。
ブリュノレンス王国に比べると、税率を上げたとしてもまだ低い税率ではあったが、二人はこれ以上、国民を苦しめることはできないと思っていた。
国民のことを第一に思っていたのだ。
とはいっても、改善をしない限り、やがて王国は財政破綻にまで進んでしまう。
殿下は、この権限移譲を機に、対策を進めることにした。
これは言うは易いが、いざ進めるとなると、対策案作りがまず大変だ。
わたしはその対策案についての助言を殿下に行うことになった。
この王国に来た当初から思っていたが、とにかく無駄な支出が多い。
これを低減するだけで、少なくとも赤字になることはなくなる。
わたしは予算の精度を向上させ、それを守らせるということを主な対策案として助言することにした。
今までも予算制度自体は存在していたが、細かいところまでは設定されたものではなく、費用を抑制していこうという意識も薄いものだった。
そういうこともあって、予算は目安としか意識はされず、守られることも少なかった。
もし多くのところで守られていれば、それだけでも赤字幅は縮小していたものと思われる。
予算の精度を向上させ、細かい内容を設定する。
その予算内で支出をおさめるべく、無駄を減らし、効率的に行うように十分検討を行う。
こうして予算を守らせていく。
そうしていけば、税率を増税前に戻していっても、赤字幅の縮小だけではなく、収支を均衡化することもできると思っていた。
そして、さらに黒字化もできるとわたしは思っていた。
最初に国王陛下と王妃殿下、そして殿下にその構想を話した。
さらにその案を練り上げて、まとまったところで殿下に助言をし、それを殿下がプロジェクトチームの人たちとまとめていく。
しかし、反対勢力の抵抗は根強かった。
こういう場合、強権で押し切ってしまうという方法もあるが、それでは、いずれ不満がたまっていき、反乱にまで発展しかねない。
殿下は、対策案を人々に納得させる為、一生懸命説得をしていった。
これもまた殿下が忙しくなっていった要因の一つになった。
しかし、殿下はそれでも疲れた様子を見せることはなかった。
その説得の結果、ほとんどの人々は納得し、対策案は実施された。
まだ実施からそれほど経ってはいないが、この対策をこのまま実施し続けることができるのであれば、赤字から脱却するという第一の目標は達成できそうだ。
今回の減税は、まだ増税前の半分ほどしかできていない。
増税前の水準まで税率を戻す。
それが次の目標になるが、この対策を続けることができるのであれば、十分達成することができるだろうと思っている。
国民からは歓迎されていると聞いていた。
また産業の育成、発展についての対策案についても殿下は検討を行っていた。
この王国の全体的な活力は沈滞化の方向。
それは増税の影響も大きいが、有効な産業振興策がとられてこなかったことも大きい。
減税も大きな方策の一つではあるが、それ以外にもいろいろな対策を行う必要がある。
これについてもわたしは助言をしている。
対策案もまとまり、実施もされたのだが、こちらの方は、効果が出てくるのはこれからというところ。
後五年もすれば、その効果が出てきて、この王国は見違えるように発展するようになると思っている。
こちらも国民からは歓迎されているようだ。
そして、貧富の格差についても、縮小していく為の対策を殿下は立てようとしている。
「あなたを襲った賊のような人たちを減らしていくには、貧しい人々を減らしていく必要があります。難しい問題ではありますが、この対策案を立て、それを成し遂げていきたいと思っています。そして、この王国すべての人々を幸せにしていきたいと思っています」
わたしは今、その対策案を検討しているところ。
対策案を立てるのは難しい。
それでも努力を続けてきた結果、もう少しで、殿下に対して助言できそうなところまでまとまってきた。
この対策案が殿下のところでまとまり、それを実施することによって、この王国がどの人々にとっても、より一層住みやすくいいところになることをわたしは願っていた。
それと同時に慈善活動にも力を入れていく。
これについては、殿下は、既に取り組みを始めていたが、周囲に理解者がいなくて困っていたそうだ。
わたしは公爵家で慈善活動をしていたので、この方面でも力になれそうだと思った。
「あなたという理解者を得ることができたのは、とてもうれしいことですし、これほどありがたいことはありません」
殿下はそう言って喜んでくれていた。
殿下と一緒に慈善活動をして、この方面からも貧しい人々を救けていきたい。
貧しい人々が救われるようになっていけば、この王国はもっといいところになっていくだろう。
その為にも、もっと殿下の力になっていきたい。
わたしはそう思うのだった。
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