第百三十二話 もう間に合わない
領民たちが帰った後、二人は、
「わたしは公爵夫人だったのよ。あんな人たちに屈するのは悔しい。協定など破ってほしい」
「わたしはこの公爵家の当主、あんな人たちとの協定など、お義母様の言う通り破ってしまえばいいんだわ」
と言った。
なんとか巻き返そうとしたのだろう。
しかし、誰も賛同するものはいなかった。
国王陛下もこの処置を認めるとともに、後継者候補選びに協力をすることになった。
そして、二人は修道院に送られる時、
「なんでわたしがこんな目にあわなければならないの!」
「わたしは公爵家の当主なのよ。この公爵家はわたしが思いのままに動かすはずだったのに、なんでこんな仕打ちを受けなければならないの!」
と言って二人は泣き叫んだという。
マイセディナン殿下も哀れだが、二人も哀れだと思った。
でも今までいろいろな人たちを苦しめてきたのだと思うと、そういう仕打ちを受けても仕方がないと思う。
今さらながら、三人は口々に、
「リーゼフィーネが婚約者のままだったら、今よりましだったのに……」
と言っていたそうだ。
でももう間に合わない。
こうして、マイセディナン殿下と継母と異母姉はそれぞれ別の修道院に送られていった。
ここまでがわたしの聞いたブリュノレンス王国とブルトソルボン公爵家の最新情報ということになる。
後継者が決まるまでは、長老が暫定的にブルトソルボン公爵家を取り仕切ることになった。
しかし、後継ぎについては、候補を選ぶのに少し時間がかかった。
お祖父様にお父様しか子供がいなかったし、お父様の子供は二人しかなく、異母姉がこういう状態になってしまったし、わたしも追放されてしまったので、近い血筋には後継ぎになれる人物はいなかったからだ。
そういう状態の中、既にオディリアンルンド殿下の婚約者になっていたわたしに、兼任してほしいという声も公爵家内に上がるようになってきた。
追放したのは、二人の間違った判断。
もともとお父上の補佐をして、この公爵家を豊かにしてきたのだから、当主になればより一層豊かにしてくれるに違いない。
そのような声は、王室に押しかけた領民たちの間でも、強かったのたが、それがさらに強くなっていた。
そうした声を受けて、公爵家よりオディアンルンド殿下のところに使者がきて、殿下とわたしに打診をしてきた。
熱意を伝えてきた。
しかし、わたしはこれからこの王国でオディアンルンド殿下を支えていかななくてはならない。
アドバイスをすることはしたいと思うが、当主となると様々なことをこなさなけらばならないので兼任は困難だ。
異母姉は、税を取り立てていればいいと思っていたようだが、そういうものではない。
常に領民や貴族たちのことを大切にして政治をしていかなくてはいけない。
わたしは申し訳ない気持ちになったが、断らざるをえなかった。
ただ、候補者選びが難航しているということだったので、提案をすることにした。
ブルトソルボン公爵家の分家の公爵家令息。
なかなか優秀な人材で、人柄もいいと以前から聞いていて、この方であれば当主としてふさわしいのではないかと思った。
その家には後継ぎがいるので、来てもらうことについての問題はない。
その方をわたしは推した。
公爵家の人々も賛同し、後継者候補をその方に決め、国王陛下にお伺いを立てた。
国王陛下の方もその方についてのいい評判を聞いていたようで、この意見に賛同し、後継者にすることを了承した。
こうして、ブルトソルボン公爵家に新しい当主が誕生した。
ブリュノレンス王国、そして、ブルトソルボン公爵家。
いずれも新しい後継者を迎え、いい方向に向かっていくと思う。
そう信じたい。
わたしもオディリアンルンド殿下と一緒に、リランギュール王国をより豊かにしていこうと思うのだった。
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