第百二十五話 マイセディナン殿下の新しい女性 (異母姉サイド)
殿下と婚約さえしなければ、つらい思いをしなくてもよかったのに……。
そう思うことがだんだん増えてきていた。
わたしは殿下に遊び相手ができる可能性があると思っていた。
いずれわたしに飽きてくるだろうと思ってはいたし、結婚したくないと思っている相手に結婚のことを強く求めていたのだから、そうなるのも仕方がないだろうと思っていた。
しかし、それが現実のものとなると別だ。
殿下は、ボイルマロール男爵家のゼリドマドロンを遊び相手にした。
わたしにははるかに及ばないが、殿下の好みのゴージャスな女性。
わたしのライバルが登場した。
遊び相手で、婚約者であるわたしの地位を壊すような女性ではない殿下は言っている。
しかし、殿下の寵愛を競うという点ではライバルに違いない。
彼女は、たちまちの内に殿下と二人だけの世界に入っていってしまった。
殿下の心は彼女にどんどん傾いていく気がしていた。
もちろん、嫉妬するようなところは殿下には出さない。
それを出してしまったら、それこそ殿下に嫌われてしまうだろう。
「殿下がわたしと結婚してくださるのであれば、殿下がその方を愛しても我慢いたします」
と殿下には言い、我慢するしか方法はなかった。
しかし、心の中は嫉妬と怒りで覆われてきていた。
わたしは殿下が好きなのでこのまま結婚していきたいと思っている。
この気持ちがなぜ伝わらないのだろう。
本当は浮気をされるの自体、嫌なことだ。
わたしのことだけを想ってくれればいいのに……。
それでもゼリドマドロンがわたしに対して遠慮している内はまだよかった。
殿下の寵愛を受けている間に、次第に態度が大きくなってくる。
わたしが殿下の執務室に来た時も、殿下と一緒にいて親しそうにすることが多くなった。
ゼリドマドロンの方は、いかにも殿下に愛されています、という雰囲気をこちらに見せつけてくるようだ。
殿下の方も、ゼリドマドロンのことを愛している、という気持ちをわたしに見せつけたいようだった。
怒りたくはないが、怒る気持ちはどうしてもたまっていく。
まだ殿下の部屋で一緒になったことがないのだけが救いだ。
殿下もゼリドマドロンもさすがにそこは自重しているのだろう。
今までの殿下の母と妹との戦いでも疲れていたのに、もう一人戦う相手が増えてしまった。
こんなはずじゃなかったのに……。
ますます疲労はたまり、嫌になってくる。
それでもわたしは戦い続ける。
こうなれば意地だ。
殿下と結婚する為にも、絶対にわたしはこの三人に勝たなくてはならないのだ!
そう心に強く思っていく、ともすれば疲れて気力がなくなりがちな自分を鼓舞していく。
わたしたちの戦いは激しくなっていった。
殿下そっちのけで、言い争いをすることも増えていた。
殿下が嫌な表情をしようとも、わたしたちは気にしなくなっていた。
殿下も、さすがにこの状況は改善しなければならないと思ったのだろう。
四人それぞれに高額な贈り物をして、言い争いを減らすようにお願いをしてきた。
殿下の母と妹に対しては、今までほとんど贈り物をしたことはなかったが、高額な贈り物をするようになった。
ゼリドマドロンについては、まだ付き合い始めたところなので、贈り物はまだだったが、これを機に高額な贈り物をするようになった。
わたしに対しては、以前から贈り物をしていたのだが、それは決して高額なものではなかった。
それが、三人と同じく高額な贈り物に変わっていった。
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