第百二十三話 冷たい言葉と態度 (異母姉サイド)
わたしは舞踏会で、参集者から冷たい対応をされ、心の打撃を受けていた。
それは殿下と過ごすことによって、少しずつ癒されていく。
殿下との婚約が成立した後、わたしにとっては幸せな日々が続くようになっていった。
殿下にとってもそれは幸せなことだとわたしは信じていた。
実際、わたしと一緒にいる時の殿下はいつも微笑んでくれていた。
もちろん、今まで殿下が十数人の女性と別れていたことは、常に頭の中にあったし、わたしもその一員になってしまうのではないか、という思いはどうしてもあった。
その一方で、婚約までしたのだから、結婚までは絶対に進むことができるだろうという気持ちも強かった。
いや、信じたいと思っていた。
また、王室や貴族のものたちから祝福されなかったことによる心の打撃は、幸せを味わうようになってからも残り続けていて、一人になった時は心が苦しくなることがあった。
それでも殿下と幸せに過ごしていれば、こうした悩みや苦しみはなくなっていくものと思っていたのだけど……。
思わぬところから、その幸せは壊れ始めた。
王妃殿下である殿下の母親と妹がわたしに対して、冷たい態度を取り始めたのだ。
この二人は、わたしと同じで、ゴージャスだし美人で気が強い。
最初は、うまくやっていけると思っていたのだが、同じような人間というところで、かえって反発するところがあったのだろう。
わたしが殿下のところにやってくる度に、冷たい言葉をかけてくるようになった。
「何をしにきたの? ここはあなたのような人が来るところではありませんわ」
と殿下の母が言うと、
「あなたのような人は、この王室には必要ありません。母上もいっている通り、あなたはここに来るべき人ではありません」
と殿下の妹も言う。
二人は、殿下の前でも平気でそういうことを言うので、困ったものだ。
最初は、
「お二人の気に入るように努力していきたいと思います」
と低姿勢を貫いていたが、いつも言われるのでだんだん腹が立つようになり、ついには、
「わたしは殿下の婚約者です。お義母様や妹様に言われる筋合いはありません」
と開き直るようになった。
わたしがそう言ったのを、殿下に対して二人は、
「こんな性格の悪い女とはすぐに別れなさい」
とわたしのいる前で言うものだから、ますます腹が立ってくる。
そして、
「あんなどうしょうもない女性と婚約を続ける必要はありません」
「今すぐ婚約破棄をしなさい」
とまで殿下に言うようになってきた。
そんな二人に対して、わたしも反撃に出る。
「申し訳ありませんが、お義母様と妹様にはうんざりしています。なんでここまでつらい思いをしなければならないのでしょう。今すぐにとは申しませんが、王位につかれたら、二人をこの王宮から遠ざけていただくことはできないのでしょうか? わたしは王妃になる以上、あの人たちと一緒のところにはいたくありません」
と殿下に言った。
これはどうしても言っておきたいことだった。
しかし、後で思ったことではあるが、言い過ぎてしまった気がする。
殿下は結局、わたしと結婚することを望んでいなかった。
それなのに、結婚ということをこの時、強く意識させてしまったのだ。
この時からすぐというわけではなかったが、この発言以降、殿下の心は少しずつわたしから離れていく気がするようになった。
しかし、だからといって撤回することなどできない。
わたしは殿下と結婚がしたい。
二人と戦い続けても、殿下の心が離れていったとしても、結婚さえしてしまえば、後はわたしの自由になる。
それまで我慢をするしかない。
しかし、そう思っていても、二人との戦いは次第にわたしの心を疲弊させていく。
殿下と会えば、依然として楽しいのは楽しい。
しかし、次第にこの心の疲弊の方がそれを上回るようになっていった。
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