第百二十話 哀願 (マイセディナンサイド)
「さて、次にルアンチーヌよ。お前はマイセディナンが修道院送りになるので、婚約は破棄されることになる」
「婚約破棄……」
ルアンチーヌは、信じられないという表情、
母王妃と妹の野望が潰えたので、表情はともかく内心は喜んでいたように思う。
それが今度は自分のところにきた。
いや、厳しい話がくることは当然予想をしていたのだと思う。
ほんの少しの時間でしかなかったが、喜ぶことができただけましだったと本人は思っているのかもしれない。
「ブルトソルボン公爵家に戻り、新しい伴侶となる人を探すことだ」
声は二人に対するほど厳しいものではなかったが、ルアンチーヌにとっては酷いことには違いない。
王太子妃、そして王妃になることなどもうできないからだ。
ルアンチーヌは、
「そんな無情なことはおっしゃられないでください……」
と言うと、机にうつ伏せになって泣き出した。
父国王は、しかし、それ以上の言葉はかけない。
そして、
「最後にゼリドマドロンよ。お前は男爵家に戻りなさい。この子のことはもう忘れて、新しい人生を歩むことだ」
と言った。
ゼリドマドロンもうなだれて泣いていたが、多分一番心の打撃は少ないだろう。
四人でまとめられているところがあるが、このゼリドマドロンはちょっとした贅沢しかしていないし、わたしの遊び相手でしかない。
貴族たちもこの女については、それほど嫌に思ってはいないだろう。
しかし、わたしにとっては、この女と別れるのはとてもつらいことだ。
そう思うのは今だけかもしれない。
それでもわたしはまだゼリドマドロンと一緒にいたいと思っている。
なんとか父国王の決定を撤回させたい。
王太子に復位するのが一番だが、せめてゼリドマドロンと一緒にいられるようにしたい。
修道院に入るのだけは嫌だ!
そう思っていると、母王妃が顔を上げて、
「この子はまだ若いのです。きっとこれからは心を入れ替えて、王太子にふさわしい人間になると信じています。もうわたしは政治に関わりたいとは思いませんので、王太子のままにしていただくようにお願いします」
と涙ながらに懇願する。
わたしはその言葉を聞いて、自分からも王太子復位を懇願する気になってきた。
無理かもしれないが、このまま従うというのも嫌だ。
わたしは、母王妃に続こうと思った。
しかし、父国王はすぐに、
「お前がもう政治に関わらないということは信じたいと思う、それはわたしとしてもうれしい。しかし、お前がそういう気持ちだとしても、この子を王太子のままにしておくのは無理だ。この子は、もうこの国の人々からの信頼はゼロになっているからだ。それに、もし王太子のままでいて、王位を継承したら、今日のことを忘れて圧制をするだろう。もうマイセディナンには政治は無理なのだ」
と言った。
わたしはガクッときたが、このまま何も言わないわけにはいかない。
もう一度頭を下げながら、
「父上、母上も言っておられる通り、これからは心を入れ替えて、王太子にふさわしい人間になることをお約束いたします、ですから、王太子のままでいさせてください」
と哀願した。
最後のチャンスだと思った。
四人も顔を上げて、
「王太子のままにしていただくようお願いします」
と涙声で父国王にお願いをした。
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