第百十八話 執務室 (マイセディナンサイド)
わたしは父国王の執務室に入り、あいさつをした後、執事の案内で席に座った。
病気だというのに、大人数の貴族とやり取りを続けていたからであろう。
父国王は、疲れた様子でぐったりしていた。
これなら厳しい言葉を言ってきたとしても反撃できる。
貴族たちと結んだ協定があっても、すぐに破棄できるだろう。
「もうすぐお前の母と妹、そしてルアンチーヌとゼリドマドロンが到着する。それまでそこの席に座って待っているのだ」
力なく言う父国王。
四人を呼ぶというところがよくわからなかった。
わたしと四人が集まったところでいいたいことがあるのだろうか?
協定のことを言うのであれば、わたし一人で十分なはずだ。
もしかして、四人にも行動をつつしめと言うのではないだろうか?
確かに最近、四人の贅沢も少しずつ度を越し始めつつあった。
しかもわたしの支出で。
貴族たちの申し出を受けてとはいっても、わたしの支出が減るのであれば、わたしは助かる。
そう思っていると、四人がこの部屋に入ってきた。
それぞれ父国王にあいさつをした後、執事によって席に案内された。
四人と父国王の側近たち数人が席に着いた後、父国王は話をし始める。
先程のように力なく話すのかと思っていたが、違った。
「さて、みなは当然知っていると思うが、今日、民衆が王宮に押しかけ、貴族たちが私の執務室に押しかけてきた」
わたしの子供の時の父国王に戻ったような、力強い声だ。
こういう話し方をすることは、最近はなかった。
もしかしたら、最後の力を振り絞っているのかもしれない。
「とんでもないことでございます」
「母上のおっしゃる通りです。腹が立ってしょうがありません」
「義母上様、妹様と同じ気持ちでございます」
「みなさまのおっしゃる通りです」
四人は口々に言う。
わたしも、
「この王宮に乗り込んでくるなど、無礼の極みです」
と言った。
しかし、父国王が、
「民衆や貴族たちは何を言いにきたと思う?」
と言うと、四人は黙ってしまった。
わたしも黙らざるをえなかった。
「だいたい理解をしていると思うが、『税率を下げろ!』『王室の人たちは贅沢するな!』『王太子を変更しろ!』というのが主な主張だ。彼らの言うことはもっともだ。近隣の王国と比較しても税率は高いし、王室内の贅沢も、最近は度を越してきている。これは言われても仕方がないところだ」
父国王は苦しそうにして、一回言葉を切った後、続ける。
「もともとはわたしの病気が重くなり、王太子であるマイセディナンに権限を委譲し始めたことが出発点となっている。マイセディナンよ、わたしは悲しい。なぜもっと王太子としてきちんとすることができないのだ……」
そう言うと、父国王は涙を流し始めた。
そして、
「彼らの言い分に従うわけではないが、このままでは大きな混乱を招く。お前がきちんとさえしていれば、わたしだってこんなことを言いたくなかった。しかし、言わざるをえないのだ」
と涙声で父国王は言う。
やはり、わたしに対して、厳しい言葉が来るということだ。
今日の様子では反撃は難しい。
受け入れられる範囲であれば、受け入れざるをえないなあ……。
そうわたしは思っていた。
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