第百十七話 反乱 (マイセディナンサイド)
わたしは軍を動かす許可をもらう為、父国王のところへ急いだ。
軍の指揮権はまだ移譲されていなかったからだ。
こういう時、とても困ってしまうことは、理解できたはずなのに……。
軍の指揮権については、わたしがいくらお願いをしても、移譲する動きはなかった。
とにかくお願いするしかない。
そう思って、父国王の病室に向かったのだったが……。
父国王は病室にはおらず、執務室に向かったそうだ。
急いで執務室に向かおうとすると、先行させていた側近が戻ってきて、
「殿下、大変です、執務室に二十人ほどの貴族が押しかけています」
と言ってきた。
「貴族たちが?」
「そうです。みな『王太子を変更してほしい』と口々に申しています」
一人や二人の数ではない。
そんなに多い数になったら、心身ともに衰えている父国王は、その圧力により貴族たちの意見に従ってしまう可能性があった。
「護衛の兵は何をしているのだ?」
「それが、あまりに急なことだったので、対応が取れなくて……」
「全員通してしまったのか?」
「はい。残念ながら……」
わたしは全身から力が抜けた。
民衆の反乱、そして、貴族たちの反乱。
その反乱の目的になっているのは、わたしなのだろう。
なんとか父国王を説得して、軍を動かし、民衆や貴族たちを鎮圧しなければならない。
そして、二度と反乱できなくなるように、厳しい対応を取らなくてはならない。
しかし、そうする為には、父国王のところへ行かなくてはならない。
その道が塞がれている以上、行くこともできない。
行けば、生命の危機が訪れるだろう。
ここにいて、父国王の執務室から貴族たちが去るのを待つしかなさそうだ。
わたしは待った。
幸いにも、民衆たちは門を破ってなだれ込むようなことはしていないようだ。
それだけはいい方向だった。
やがて、しばらくすると、父国王の側近から、貴族たちが執務室から去っていったという情報が入った。
わたしはホッとし、
「すぐにでもお目にかかりたいと思います」
と言ったが、父国王の側近は、
「少しお待ちいただけないでしょうか。『会うまで少し時間がほしい』と国王陛下はおっしゃっています」
と言う。
わたしは、父国王と貴族たちとの間で、わたしのことについて、何らかの協定を結んだのではないかと思った。
それを父国王の側近に聞いたのだが、
「わたしにはわかりません。とにかくここでお待ちください」
と言うのみ。
何度も聞いたのだが、同じ返事しかない。
知らないものを聞いてもしょうがない。
父国王の側近は、父国王のところへ戻っていった。
仕方がなく、そのまましばらく待っていると、ようやく父国王から、
「わたしのところに来るように」
という連絡がきた。
疲れてきていたわたしだったが、気を取り直し、執務室に向かっていく。
どういう協定を結んだのかはわからない。
「王太子の権限を縮小してほしい」
というようなものであることは想像できた。
しかし、そうであったとしても、わたしは負けない。
父国王を説得し、反乱した貴族たちと民衆たちに対して厳しく対応してやるのだ!
協定などあっても破棄するだけだ!
反乱など二度と発生することないようにしたい!
そう思いながら、わたしは歩いて行った。
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