第百十六話 反対勢力 (マイセディナンサイド)
わたしと母王妃、妹、そして、ルアンチーヌの三人との仲はぎくしゃくしていた。
まだ今のところは大丈夫だが、わたしがゼリドマドロンに飽きてくれば、今度はゼリドマドロンと仲がぎくしゃくしていく気がしている。
母王妃・妹とルアンチーヌの仲も悪化の一方。
わたしの悩みの種だった。
この四人の機嫌をとる為、贅沢をさせることにした。
とても悔しいことではあったのだが……。
それが功を奏して、わたしと四人、そして、母王妃・妹とルアンチーヌの間は、小康状態になった。
母王妃と妹の権限移譲の要求も弱まっていった。
ところが、もう一つの問題が持ち上がり始めていた。
最初は満足していた四人。
しかし、やがて、四人の贅沢に対する要求がどんどん膨れ上がっていったのである。
四人の中で一番そういうことはしないと思っていたゼリドマドロンまでが、
「もっと贅沢をしたいです」
と言ってくる。
贅沢をしていいのは、わたしだけだと思っていたので、この状況は耐えがたいものだった。
しかし、贅沢をさせなければ、四人の不満がたまっていく。
特に母王妃・妹とルアンチーヌの間の戦いは、再び激しくなるに違いない。
そうした状況に苦しみ始めていると……。
王宮の前に、われわれに反対する国民の勢力が集まるようになってきた。
わたしがこの王国の実権を握り始めてから重くしてきた税に対する不満のようだ。
毎日のように、
「税金をもっと安くしてくれ! これでは生きていけない! 我々は毎日つらい思いをしているんだ!」
と王宮の門の前で大きな声で叫んでいて、外に出ると、こちらの方にも聞こえてくる。
最初は、
「どうせ小さい勢力だろう。たいしたことはない」
と側近たちにも言ったし、そう思っていた。
しかし、次第にそれは大きなものになっていった。
これだけならまだいい
王室内や貴族の間でも、次の王太子にふさわしい人間ではないという貴族の不満が次第に膨らみつつあり、この国民の不満と結びつく可能性が出てきた。
彼らの主な主張は、
「今の王太子は贅沢しか能がない。女性は付き合ってはすぐ捨てるし、貴族たちには冷たい仕打ちをする。嫌いだと思った貴族の領地を減らし、お気に入りの貴族の領地を増やす。すべては気分次第。こんな人物にこの王国は任せられない!」
というものだ。
国民と貴族の不満。
わたしからすると、理解が全くできないものだ。
国民、そして貴族はわたしに奉仕する為にあるもの。
わたしは贅沢をする為に生きている。
好き嫌いで領地を増やしたり減らしたりするのがなぜいけないのだ。
わたしはそう強く思う。
国民と貴族の不満は、わたしだけではなく、四人にも向くようになった。
わたしと同じで贅沢三昧な生活をおくっているのが気に入らないのだろう。
「今すぐ贅沢を止めて、我々の生活を救ってほしい!」
そういう声が大きくなってきていく。
そして、今日の朝。
「殿下、反対勢力が王宮の門の前に集まってきています」
側近の一人がわたしの執務室に駆け込んできていた。
まだ昨日の夜のゼリドマドロンとの逢瀬の余韻が残っていたわたしは、そう言われて、気分が悪くなった。
「なんだ。そんなつまらないことでわたしのところに朝から来るな!」
そう怒鳴った。
いつもはそれで黙ってしまう側近は、
「それがいつもと違うのです。『門を開けろ!』と叫んでいます。とにかく外の様子を御覧になってください」
と言ってくる。
いつもと違う様子だ。
仕方がないので、門の様子が眺められる高い階に行ったのだが……。
「こ、これはなんだ。こんなに多い人数が集まってきているのは初めてだぞ」
集まった民衆は万を越える状態にまでになっている。
「王宮とまちの行き来も止まるほどになっております」
側近は悲しそうに言う。
「今すぐ別の王太子に変更しろ!」
「変更して税を軽くしろ!」
「王室は贅沢をするな!」
大きな声が聞こえてくる。
それにしてもこれほどの大人数になるとは……。
このままでは門から王宮に反対勢力がなだれ込んでくるだろう。
そうすれば、わたしだけでなく、四人の生命の危機になっていく。
「これは、鎮圧するしかない!」
そう思ったわたしは、父国王のもとに向かった。
「面白い」
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