第百十三話 殿下のやさしい気持ち
わたしたちは今、お互いに寝間着を着て、ベッドの上に横たわっていた。
微笑んでいる殿下。
恋人つなぎ。
殿下との手からは、やさしい気持ちが流れ込んできている。
わたしたちは、二人だけの世界に入っていき、そこから戻ってきていた。
前世では経験できなかったこと。
わたしはそこで、殿下と究極の幸せを味わった。
今までもわたしたちは相思相愛。
殿下はわたしのことを愛してくれていたし、わたしも殿下を愛していた。
前世でもキスはしていたし、今世でもキスはしていた。
それで十分殿下と結び合っていたと思っていた。
しかし、この経験はそれを越えるものだった。
心の底まで殿下に尽くせることができた気がする。
心の底で殿下と結び合えた気がする。
それほどまでの経験だった。
ああ、殿下。
とても素敵な方。
ますます殿下に対する愛情は深くなっていく。
「リンデフィーヌさん、ありがとうございます。わたしは今、とても幸せな気持ちです。あなたと出会うことができて、本当によかったと思っています」
殿下は微笑みながら言う。
「こちらこそ、ありがとうございます。殿下に愛していただいて、わたしは幸せものでございます」
「リンデフィーヌさん、あなたはとても素敵な方です。今までもそう思ってきました。しかし、ますますその思いは強くなってきました。わたしがあなたにとってもっとふさわしい人間になっていけるように努力していきたいと思っています」
「そんな、わたしは殿下にそのようなことをおっしゃっていただけるほどの人間ではありません。殿下はわたしよりもはるかに素敵な方です。わたしこそ、殿下にふさわしい人間になれるように努力していかなければならないと思っています」
「わたしはあなたのそういう決して偉ぶらないところが好きです。でもあなたは、もっともっと自信をもっていいです。わたしにとっては、あなたほどの素敵な女性は。存在しないのです。それほどの女性なのです」
心の底から褒めてもらって、とてもうれしい。
まだまだ殿下にとってふさわしい女性には、ほど遠い気がするけれど、少しでも近づいていけるように努力していきたいと思う。
「わたしにとっても、殿下ほどの素敵な男性は存在しません。それほどの存在です」
「ありがとうございます。ご期待に沿えるように、これからも一生懸命努力します」
そう言った後、殿下は、
「大好きです」
と言って私の唇に自分の唇を重ねる。
しばらく幸せの時間を過ごした。
やがて、殿下は唇を離す。
ああ、もっとキスをしていたい。
殿下とキスをすればするほど、唇を離すのが惜しくなる。
そして、キスがまたしたくなる。
殿下、何度でも何度でも、わたしにその唇を重ねてください。
それだけ殿下のことが好きなんです。
わたしは甘い気持ちになりながら、殿下の唇を待った。
すると殿下は、またわたしに唇を近づけてくる。
期待をするわたし。
しかし、殿下はその動きを今度は途中で止めた。
どうしたのだろう?
残念な気持ちになる。
そして、殿下は真剣な表情になって話をし始めた。
「これから一年かけて、わたしは国王陛下より権限の多くを移譲されます。今までもある程度はされていたのですが、軍の指揮権や内政の全権といった重要なところも移譲されることになります。その対応の為、今よりも忙しくなります。わたしはできれば、すぐにでもあなたとの結婚式をしたいと思っています。しかし、今はその準備に時間をとることが難しく、断念せざるをえません。申し訳なく思っています」
そう言って殿下は頭を下げた。
「面白い」
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