第百十話 殿下の隣
わたしは殿下の寝室に招待をされていた。
国王陛下と王妃殿下に、殿下との婚約を認めてもらった夜。
わたしは今、ベッドの上で殿下の隣に座っていた。
この部屋に入る前から、わたしの胸のドキドキはどんどん大きくなっていたのだけど、まだそれはなんとか耐えられるものだった。
しかし、今は、殿下のすぐそばにいて、肩が少しで触れ合うところまできている。
そして、キス以上のことをして行こうとしている。
わたしは殿下に初めてをささげることができる。
それは、わたしにとってはとてもうれしいことなのだけど、胸のドキドキと恥ずかしさは、今まで経験をしたことがないほど大きくなってきている。
キスまでであれば、これまでも毎日してきた。
もちろん唇と唇を重ね合わせるだけでも、毎回胸がドキドキして、恥ずかしくて、心が沸き立っていた。
しかし、これから行おうとすることは、それを越えること。
胸のドキドキが大きくなりすぎて、自分というものが壊れてしまうのではないかという気がする。
到底耐えられない気がする。
婚約を二人に認めてもらった時は、
「今夜は、殿下にわたしのすべてをささげたい」
と強く想って、心の準備をしていた。
しかし、こうして殿下を目の前にすると、心のコントロールができなくなる。
殿下の方はどうなのだろうか?
殿下は今まで、女性と付き合ってことがないと言っていた。
殿下は女性にとてもモテる。
今までも言い寄る女性はたくさんいた。
それなのに、誰とも付き合ったことがない。
わたしとのキスがファーストキスだと言っていた。
ということは、これから行おうとしていることも、初めての経験ということになる。
殿下の胸のドキドキも大きくなってきているようだ。
さすがの殿下も、恥ずかしさがあるのだろう。
なかなかわたしに話かけてこない。
わたしの方も、殿下に話しかけることができない。
胸のドキドキが大きくなりすぎて、言葉がでてこない。
しばらくの間、寝室は沈黙に包まれていた。
やがて、殿下は、
「リンデフィーヌさん、これでわたしたちは婚約することができました。とてもうれしいです」
と言って、ようやくわたしに言葉をかけてくれた。
殿下は、胸のドキドキを抑え始めたようだ。
わたしもそれに応えていかなくてはならない。
わたしも胸のドキドキをなんとか抑えつつ、
「殿下のご尽力で、婚約することができました。ありがとうございます。わたしもとてもうれしいです」
と言った。
「いや、あなたの人徳がお二人を動かしたのです。わたし一人が婚約したいと言い続けたとしても、認めてくださらなかったかもしれません」
「人徳なんて……。わたしなど、まだまだ殿下に比べれば、足りないところがいっぱいあると思っています。もっと努力していく必要があると思っています」
「そういう自分のことを偉いとは思わないところがいいのです。そして、わたしは、あなたのそういうところも好きなのです」
殿下は微笑みながら言う。
「殿下、お褒めになるのが上手すぎます」
わたしは恥ずかしさが増してくる。
少し抑えていた胸のドキドキもまた大きくなってきた。
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