第百九話 想いが通じていく
わたしは国王陛下に、悶え苦しみそうな恥ずかしさを抑えて、殿下への想いを伝えた。
国王陛下はしばらくの間、何も言わなかった。
腕を組んだまま。
柔らかくなってきたと思っていたが、また厳しい表情に戻っている。
婚約を認めないつもりなのだろうか?
殿下は、どう思っているのだろう? 心配をしていないだろうか?
と思って、殿下の方を向くと、殿下は自信ありげに微笑んでいる。
そして、
「大丈夫ですよ」
と言ってくだった。
わたしは勇気づけられた。
これだけ一生懸命想いを伝える努力をしたのだ。
きっとその心は通じるはず。
そう思っていると、国王陛下が話をし始める。
「リンデフィーヌさん、あなたの気持ちは理解した。王太子のことをそれだけ愛してもらっているということだな」
「おっしゃる通りでございます。愛しています」
恥ずかしくても、その想いは伝えていかなくてはいけない。
「わたしは、先程も申した通り、前世の存在については何もわからない。しかし、王太子も言っていたが、あなたも前世から王太子のことを愛していると言っているということは、あなたたちが、前世から固く結びついているということだ。そうであるならば、あなたたちの結びつきは、これからも固く続いていくに違いない。そう信じたいと思う。そこで、あなたにお願いしたい。王太子を一生愛することを誓ってほしい」
国王陛下は、少し柔らかい表情になっていた。
「わたしは殿下のことを一生愛していくことを誓います」
わたしは殿下への想いを込め、強い口調で言った。
「ありがとう。リンデフィーヌさん」
国王陛下はそう言うと、王妃殿下の方を向き、
「これで、王太子とリンデフィーヌさんの、お互いに対する強い想いを理解することができた。ここまでお互いを想い合ってくれてのはとてもうれしいことだ。そして、お互いに一生愛していくことを誓ってくれた。わたしは二人の婚約を認めようと思う」
と言った。
それに対し王妃殿下は、
「わたしはリンデフィーヌさんが、婚約を破棄され、公爵家を追放されたと聞いていたので、ここに来た時は、あまりいい印象は持っていませんでした。しかし、王太子から話を聞く内に、いい印象に変化してきました。それでも、王太子が褒めすぎているのではないかという気持ちがありました。会って、婚約者にふさわしいかどうか確認する必要があると思ったのです。しかし、会ってみると、王太子が申していた以上のお方でした。この人ならばお妃にふさわしいと思いました。お互いを一生愛していくことを誓ってもらったのもいいことです。わたしも二人の婚約を認めたいと思います」
と言った。
国王陛下はわたしたちの方を向くと、
「これで、あなたたちの婚約は成立した。正式な婚約の式は別途行うが、今の時点からあなたたちは婚
約者どうしとなる。二人ともお互い愛し合って、一緒にこの王国を発展させ、幸せになってほしい」
と笑顔こそなかったものの、今までにないやさしい口調で話をしてくれた。
「お父上、婚約を認めていただきまして、どうもありがとうございます」
殿下は、涙声になりながら、そう言った。
わたしも涙をこらえながら、
「ありがとうございます」
と言ったのだった。
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