第百八話 殿下の想いとわたしの想い
殿下は、国王陛下に対し、わたしへの想いを話し、二人で幸せになると言ってくれた。
うれしかった。
国王陛下と王妃殿下は、殿下の言葉を聞いて、とても驚いているようだった。
その為、しばらくの間、何も言えない状態になっていた。
やがて、国王陛下は、
「王太子よ、お前はこの方を一生愛するというのだな?」
と言った。
少し表情が柔らかくなった気がする。
「お父上、そのことをここで誓わせていただきたいと思います」
殿下はそう力強く言った。
「前世のことはわたしにはわからない。存在するかどうかはわからない」
「わたしはこの方を前世から愛してきました。そして、これからも愛していきます」
「お前がそう言うのなら、前世からこの方を愛していることを信じてもいいと思う」
「ありがとうございます」
「お前の気持ちは理解した。この方を一生愛していくという気持ちをずっと持ち続けてほしい」
国王陛下はそう言うと、わたしの方を向いた。
「王太子の気持ちは、今、聞いての通りだが、二人が一生睦み合っていくには、一方の意志だけでは足りない。あなたの方も、王太子ほどの強い想いを持っていなければならない。その点はどうなのだ? あなたの想いが弱ければ、わたしは婚約を認めるわけにはいかない。二人の意志が両方強くなければ、結婚したとしても長続きはしない、離婚などということになったら、お互いに傷がついてしまう。王太子にとっても、あなたにとってもそれはつらいことだと思う。長続きがしないものと思われることを認めることなど、わたしではなくてもできないと思う。あなたは王太子を一生愛することができるのだろうか? 今の時点でそういう気持ちがないのであれば、今は王太子への愛があったとしても、いずれその愛はなくなっていってしまうと思う」
先程よりは柔らかい表情だが、言葉は依然として厳しい。
わたしは、今こそ国王陛下に殿下への想いを伝える時だと思った。
緊張するが、それを抑え込んで、話をし始める。
「わたしも殿下のことが大好きです。もう一日、一時も離れたくないほど好きなのです。わたしにも前世から殿下を愛してきた記憶があります。前世では、わたしが若くしてあの世に戻ってしまったので、婚約はしましたが、結婚まではできませんでした。今世では長生きをして、ずっと殿下のことだけを強く想い、尽くしていきたいと思っています。そして、殿下に尽くすことによって、この王国を発展させていきたいと思っています。一生、殿下を愛し、殿下とともに幸せになっていこうと思ってします。どうか、殿下との婚約を認めてくださいませ。よろしくお願いします」
わたしはそう言って頭を下げた。
恥ずかしかった。
国王陛下に殿下への想いを伝えなければならないとはいっても、
「もう一日、一時も離れたくないほど好きなのです」
と言うのは、悶え苦しみたくなるほどの恥ずかしいことだった。
それでもわたしは国王陛下に殿下への想いを伝えなければならなかった。
そうでなければ婚約は認めてもらえない。
この殿下への想いが、国王陛下に伝わることを願っていた。
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