第百六話 わたしの対策案
わたしのいたブリュノレンス王国と違い。この王国は、税はブリュノレンス王国ほど重くはない。
経済的にも、より繁栄をしていると言っていい。
しかし、それは比較の問題だった。
この王国も、十年ほど前に財政が赤字になって以降、赤字が続いていたので、その分を埋めなければならなくなっていた。
その分を埋めるには、税率を上げることによって対応するしかないという声が王室の中で高まっていった。
国王陛下は望んでいなかったという。
しかし、検討を依頼された側近たちも他にいい案がなく、やむなく増税をすることになった。
税率そのものは、ブリュノレンス王国よりも低いが、それでも中堅層から貧困層の人々にとっては打撃になっていった。
これが、経済活動を沈滞化させている大きな要因になってきている。
王室はそれほど贅沢をしているという印象はない。
殿下はもちろんのこと、国王陛下も王妃殿下も、贅沢が特に好きということではない。
ブリュノレンス王国とはその点が違っている。
それでも王国自体の規模が大きいこともあり、無駄な出費と思われるものが結構多いように思われた。
この無駄な出費を減らすだけでも、かなりの収支改善になる。
増税する前の税率に戻しても、少し黒字がでるほどだ。
もちろん、それだけではまだ足りない。
商業、農業といった産業をもっと発展させていく必要がある。
その振興策について、検討していかなくてはならない。
産業が発展していけば、王国の国力も上がっていく。
そして、貧富の差の増大の改善。
これもブリュノレンス王国ほどではないが、十年ほど前に比べると拡大傾向にある。
もっと差が増大していくと、貧困層の反乱に発展していく可能性がある。
貧困層に対しての援助は、今まで少なかったので、これからは積極的に援助していく必要がある。
貧富の差をなくしていくのは、とても大切なことだ。
みんなが笑顔になれる王国にしていきたいと思う。
「まだまだ情報が不足していますし、対応策もこれからのことが多いですが、一生懸命努力していきたいと思います」
と言って、わたしは国王陛下への助言を終えた。
国王陛下はしばらくの間、黙っていた。
やがて、
「助言については、ありがとうと言っておこう。王太子の言う通り、才色兼備の女性だ。それは認めることにしよう。そして、あなたの助言は、この王国にとって有益なものには違いない。採用すべきところは採用に向けて検討すべきだろう」
と国王陛下が言うと、
「わたしも、その点は認めてあげたいと思いました」
と王妃殿下も言った。
これで、殿下との婚約を認めてもらうことができると思ったのだけど……。
しかし、国王陛下は、
「あなたは王太子の婚約者としてではなく、アドバイザーとしてであれば、今すぐ採用してもいい。あなたの能力は買っているのだ」
と言った。
アドバイザー。
国王陛下がわたしのことを評価し始めているのは、うれしいことだ。
殿下のそばで使えることはできる立場になる。
しかし、それで満足はできない。
わたしは殿下の婚約者になりたいと思っている。
婚約者、そして妃として殿下に助言をしていきたい。
ただのアドバイザーで終わりたくはない。
わたしは殿下のことが大好きで、すべてを殿下にささげたいと思っている。
殿下と婚約をしたい。
わたしはそのことを国王陛下に伝えようとした。
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