第百三話 殿下の努力
夜、殿下といつものように一緒におしゃべりを楽しんでいると、
「リンデフィーヌさん、いよいよ明日ですね」
と殿下が言った。
明日は、国王陛下と王妃殿下に、婚約を認めてもらおうとする日だ。
「だんだん緊張してきています。国王陛下と王妃殿下が、わたしのことを嫌がって、殿下との仲を認めていただけないのでは、ということをどうしても思ってしまいます。殿下がわたしの為に、ずっと尽力されているのはもちろん理解しております。殿下がいつもおっしゃっているように、大丈夫だとは思っているのです。しかし、まだそういう弱気なところが残ってしまっています。申し訳ありません」
殿下のご尽力には頭が下がる。
二人に毎日のように、わたしが婚約者にふさわしい女性である、ということを話して下さっていた。
最近では二人のわたしに対する印象も良くなってきたようだ。
それでもまだ仲を認めてもらえないのでは、と思ってしまう。
そういうわたしに対し殿下は、
「無理もないと思います。でもこの一か月の間で、あなたとの仲はとても進んだと思います。わたしはあなたのことが好きでたまりません。本当は、あなたと一瞬でも離れ離れになりたくはないのですが、それができないのは残念です。そして、あなたは王太子妃、そして王妃にふさわしい器であることがよくわかりました。お父上にもお母上にも自信をもってあなたを推すことができます。お二人もあなたのことを認めてくれます」
とやさしく言ってくれた。
その殿下の言葉に応えていかなくてはならない。
「そう言っていただき、自信がでてきます。わたしも殿下のことが好きでたまりません。殿下の為に尽くし、この王国を豊かにしていきたいと思います」
わたしは殿下にそう言った。
「ありがとうございます。きっと、その心はお二人に届きます。そして、わたしたちの婚約が正式に決まります」
殿下はそう言った後、
「明日、お二人に婚約を認めていただいた後、わたしの寝室に、あなたを招待したいと思っています。そこで、夜を一緒に過ごしたいと思います」
と恥ずかしがりながら言った。
殿下の寝室への招待、そして、夜を一緒に過ごす……。
殿下もついにその気になったということだと思う。
わたしは一瞬、躊躇した。
殿下のお誘いはうれしい。
でもわたしは、殿下にふさわしい女性なのだろうか?
ふさわしくないのであれば、そういうお誘いを受けてはいけないのでは?
そう思ったのだけど……。
「わたしはあなたにすべてをささげたい。それほどあなたが好きなのです」
殿下の言葉。
やさしさと強さが込められていた。
殿下がわたしを求めてくれている。
この殿下の気持ちに応えるべきだ。
わたしは、
「わたしも殿下にすべてをささげます。殿下が大好きです。よろしくお願いします」
と恥ずかしさを抑えて言った。
殿下はわたしを抱きしめる。
「リンデフィーヌさん、うれしいです。婚約を明日、お二人に認めてもらいます。そして、結婚しましょう」
「殿下、わたしもうれしいです。ありがとうございます」
近づく殿下の唇。
そして重なり合う唇と唇。
わたしたちは幸せな気持ちになっていくのだった。
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