第百話 婚約を認めてもらおうとする殿下
殿下としては、わたしと前世の時からの縁を思い出した翌日には、国王陛下と王妃殿下のところにわたしを連れていって、婚約を認めさせようとしたいと思っていた。
殿下はまず一人で二人のところへ行き、許しをもらった後、わたしを連れて行く予定だったのだけど……。
婚約を破棄されたのは、わたしの問題ではなく、相手の方の問題であることは、殿下の話によって理解はしたようだ。
わたしの人間性についても、殿下の話である程度は理解してくれたと思う。
いや、殿下は、お二人に
「リンデフィーヌさんは素敵な女性です」
ということを強調していたようで、わたしとしては、褒めすぎではないかという気がしている。
しかし、二人は、それでもすぐにはわたしと会おうとしなかった。
王妃殿下は、
「それはお前が思い込んでいるだけかもしれません。もし一時的なものであれば、お互いに傷ついてしまいます。自分がその人のことが本当に好きなのか、ということをこれから一か月の間、よく考えることです」
と言っていたというし、国王陛下も、
「もし一か月経っても、お前のその方に対する気が変わらないのであれば、わたしたちの前にきてもらうことにする。お前の母が言う通り、一時的なものであれば、お前だって傷ついてしまうし、相手も傷つけてしまう。この一か月間、その方が本当の王妃としてふさわしいのか、一生愛していけるのか、ということをよく考えなさい」
と言っていたと殿下から聞いた。
多分、二人は、殿下がわたしのことを一目惚れして、その恋する心のままに婚約、そして結婚にまで進もうとしていることに対し、一時の熱情で動いているのだと思ったのだろう。
そこで一か月という冷却期間を置き、その間に、本当にわたしのことが好きで、しかもわたしが王妃にふさわしい女性であることを、殿下に見極めさせようとしたのだと思う。
その気持ちについては理解できる。
わたしが二人の立場でも、同じことを思ったに違いない。
そして、二人は、殿下のことを心配しているのはもちろんのことだが、わたしのことも心配してくれているように思った。
ありがたいことだと思う。
殿下とわたしは、この一か月の間、愛を育んでいった。
わたしたちはフィーリングが合っていて、一日ごとにどんどんお互いのことが好きになっていく。
会える時間は限られていて、昼食の時と、殿下の仕事が終わった後の時間ぐらいだった。
朝食と夕食は、国王陛下と王妃殿下とともにとっているので、一緒にとることはできない。
また、夜寝る時は、別々の部屋なので、一緒に寝ることはできなかった。
まあこれは仕方がないと思っている。
まだ正式な婚約をしたわけではないし、わたしの方も心の準備ができていないところがある。
殿下とは、まだキス以上には進んでいない。
それ以上に進みたい気持ちもあるが、恥ずかしい気持ちの方が上回ってしまう。
殿下の方も心の準備がそこまでできていないようだった。
前世で結婚の約束をしていても、この恥ずかしい気持ちを抑えることはなかなかできないものだ。
それでもいずれはキス以上に進んでいかなくてはならない。
進んで行くところは、二人だけの世界。
いつ殿下に求められてもいいように心の準備をしていこう。
わたしはそう思うのだった。
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