保護
家に帰る前に特大ウーパールーパーに必要な飼育道具を購入しにホームセンターを訪れた。
ここまで歩いてくるのもしんどかったというのに、当の特大ウーパールーパーは私のカバンの中ですやすやと眠っている。
まだこの子がウーパールーパーと決まったわけではないが、ここにきて飼育道具はウーパールーパー用のもので問題ないのだろうかというか疑問が浮かんできた。見た目はどう見てもウーパールーパーだが、全くの別の生き物だったりしないだろうか。実はオオサンショウウオ科とかそういうのがあって、この子はその科に属する別の生き物だったりして…。まぁでも見た目が似てるなら生活も大体似てるんだろうし、ウーパールーパーと仮定して育てる他ないか。
まずはが必要だろうから、水槽を用意するとして…。この大きさに適する水槽ってどれくらいの大きさになるのだろう。この子が推定40~50㎝だから…1mとか…いや、もっといるのだろうか。
盛大に悩んでいると、見かねた店員さんが声をかけてくれた。
うまい嘘を付く自信がなかったので、素直に特大ウーパールーパーみたいなものを一時的に保護したことを店員さんへ話した。
店員さんは無知な私のためにウーパールーパーの基本的なことを親身になって教えてくれた。
ウーパールーパーは平均23㎝ほど大きくなり、中には30㎝くらいの大きさになるものもいるらしい。が、店員さん曰く40~50㎝は聞いたことがないらしい。
やはり特大というのは間違いではなかった。
そういえば、ウーパールーパーは陸でも生活できるものなのだろうか。水中生物だと思っていたが、これも私が無知なだけで、陸でも生活できるのかもしれない、そう思い、店員さんへ質問した。
「ウーパールーパーは水の中で生きる生物だと思っていたんですけど、保護した子は陸で動き回ってて、ウーパールーパーってそういうものなんですか?」
「肺呼吸ができているということは、成体なんじゃないですかね?エラってその子にありましたか?」
エラってあの触覚みたいなやつのことか?と考え込んでいたら、「あぁ、フサフサした触覚みたいなのって言ったらわかりやすいですかね…。」とわからない私に優しく教えてくれた。
エラがあることを店員さんに伝えると、困惑を隠せない表情でウーパールーパーの写真がないかと聞かれた。
運よく捕獲時に撮っておいた写真があったので、それを見せた。
店員さんはエラがあることを写真で確認し、写真を見る限りウーパールーパーで間違いなさそうと言った後に、この姿なら長時間の陸上生活はできないはずだと不思議そうに話した。
エラがなくなり、陸上で生活するようになることを陸化といい、エラから肺呼吸に切り替わり、その時にエラがなくなるらしい。ただ、陸化途中だと水中と陸上を交互に行き来するので、もしかしたら陸化途中の可能性があると丁寧に説明してくれた。
それだけの情報だと陸化しているかどうかまではわからないが、少なくとも幼体ではなさそうなので、陸化途中の可能性を加味して泳げるスペースを確保しつつ、陸部分も水槽の中に作れば良いらしい。
体長からして100㎝の以上水槽が必要で、このお店には120㎝の取り扱いがあるらしいが、残念なことに欠品しているらしい。
そもそも、それなりに大きな水槽となると、価格とかも高いんじゃないのか。
あまりに高い金額だと買うことができないので、恐る恐る金額を聞いてみたら、3万円ほどとのこと。まあそうですよね。数千円とかではもちろんないでしょうね。お給料日とはいえ、薄給でやらせてもらっているのでポンとそんな金額は出せない。ただ、その水槽は現在欠品しているので断りやすい。とりあえず考えますとだけ伝えて、しばらくは浴槽で飼うか。
ひどいと思うだろうが、私も生きるのが精いっぱいなのである。月に1度のご褒美が書籍購入とカフェでお茶なのだ。自分で精いっぱいなことは容易に想像つくであろう。
一時保護ではなく、その命尽きるまで一緒に過ごすのであればそりゃあ薄給でもクレジットカード分割払いでなんとか工面しますよ。あくまで一時保護なのでね。三か月はとりあえずいいかな。浴槽貸し出すし。案外浴槽の方がよかったりするかも。
見苦しい言い訳を頭の中でぐるぐると考えながら、店員さんにウーパールーパーの餌と水温計、そしてカルキ抜きだけ購入し、帰宅することにした。