次の夢へ-7
『さぁ!最終コーナーに入って先頭との差が詰まってきたぞ!
逃げるドリームメーカーまだまだ力強い走りだ!
おーーーーーっと!
デビルカッターとロンバルディアが並んで上がってきたぞ!
ファンタジスタもすぐ後ろまで来ている!ユリノアマゾンもすぐ後ろだ!
今ドリームメーカーが先頭で直線に入った!』
このレースを独り寂しく見る男、龍田仁。
競馬界の異端児としてテレビやメディアで人気を獲ている。
傲慢な振る舞いではあるが実は繊細な心の持ち主。
今、彼の手の中には友人である吉野春文のファンタジスタと飛田雅樹のドリームメーカーの馬券が握られている。
フン…金が300万程余ったからな!
って言おうと思っている。
友達想いの愛すべき人間だ。
『直線に入ってドリームメーカーまだ先頭だ!
しかし後ろにデビルカッターとロンバルディアが追ってくるぞ!
ファンタジスタはいい脚だ!
大外一気でユリノアマゾンもやってきた!』
「コナン!がんばって!」
精一杯の声援を贈る、菱田瑤子。
馬を愛いし、そして愛されたこの才女は今走る我が愛馬に感動している。
名家で生まれ、名門学校で育ち、名馬主の元で競馬を学んだ瑤子。
貧乏牧場に身を落としたかのように見える今の彼女の姿には、以前の無意味なプライドなどなく、生きる事の素晴らしさを全身に発している。
そう…今のために過去があるのだ。
瑤子は先代社長から言われた言葉を思い出していた。
『今の自分を知りたければ過去の自分を思い出してみなさい。未来の自分を知りたければ今の自分を見つめてみなさい』
と。
瑤子は今の自分を見つめている。
何故なら未来の自分はもっと素晴らしい人生になっていたいから。
「コナン!がんばって!コナン!がんばって!」
菱田瑤子。彼女の第2の人生はまだ始まったばかりだ。