鎮静歌-7
『レースは半分を過ぎようとしています!』
ドリームメーカーは逃げない!?
俺は目を疑った。逃げると言う表現は的確ではない。ドリームメーカーにとっては逃げではなく爆進とでも言おうか。
そのドリームメーカーはいつもの爆進ではなく二番手に待機していた。
村木は抑えている様子はない。
「見てるわ…」
瑤子が呟いた。
「なにを?」
「ドラゴンウイングの事を…」
初めて負けた相手であるドラゴンウイングを後ろからのプレッシャーで攻めてやろうと言うのか…。
もしそうだとしたら、けっこう根にもつタイプだな…。
そしてファンタジスタがいつもより前の位置にいるのも気になる。
春文に聞いたら
「まぁ見てなって…」
なんか楽しみにしてろ~って感じに聞こえるが。
『残り1000を過ぎて先頭はドラゴンウイング!
ドリームメーカー今日はこの位置!
ロンバルディアは淡々と前を伺っている!
それを見るようにファンタジスタ!
それからかなり後方にフォークギア!
いまだシンガリで息を潜ませるユリノアマゾン!』
河内洋一はユリノアマゾンから溢れんばかりの闘志を感じていた。
もうすぐお前の発射地点だ…
もうすぐ…もうすぐ…
それまで我慢だ…
『さぁ第3コーナーを通過!
まだドラゴンウイングかなりのリードだ!
ここでドリームメーカーが一気に前に詰めた!
ロンバルディアもこっから前に出てきたぞ!
ファンタジスタも続いてやってくる!
外めからスルスルっとフォークギア!
ユリノアマゾンはまだ動かない!』
そして…運命の直線へ…。
『残り600の標識を過ぎて直線に向いた!
ドラゴンウイングが5馬身程のリード!
しかしドリームメーカーが一気に差を3馬身まで詰めてきたぞ!
ロンバルディアも長部がムチを入れて追っている!
ファンタジスタだファンタジスタだ!ロンバルディアに並ぶ勢い!
フォークギアも外から追い掛ける!
大外にユリノアマゾン!
河内のムチが今入った!』
ユリノアマゾンは一気に後続を抜きにかかった。
『さぁユリノアマゾンが凄い脚でやってきたぞ!
先頭はドラゴンウイング!
そのすぐ後ろにドリームメーカー!
ロンバルディアとファンタジスタは体を併せるかたちで追っている!先頭とは3馬身差か!
外からフォークギアもやってくるぞ!
その後方のユリノアマゾンは凄い脚だ!』